平成28年台風10号豪雨によって北上山地東部で発生した土砂災害

  • 岡本 隆
    (国研) 森林研究・整備機構 森林総合研究所 森林防災研究領域
  • 阿部 俊夫
    (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 東北支所

書誌事項

タイトル別名
  • Sediment Disasters in East Part of the Kitakami Mountains Triggered by the Heavy Rain from Typhoon Lionrock in 2016
  • 近年の土砂災害シリーズ 平成28年台風10号豪雨によって北上山地東部で発生した土砂災害
  • キンネン ノ ドシャ サイガイ シリーズ ヘイセイ 28ネン タイフウ 10ゴウ ゴウウ ニ ヨッテ ホクジョウ サンチ トウブ デ ハッセイ シタ ドシャ サイガイ

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抄録

<p>2016年(平成28年)台風10号は,気象庁の観測開始以来はじめて東北地方の太平洋側へ上陸し,岩手県の小本川,閉伊川流域を中心とする北上山地東部に甚大な土砂災害をもたらした。現地調査によれば当該地域では大規模な斜面崩壊は発生しなかったにもかかわらず,渓流域から土石流や土砂流形態による大量の土砂流出が認められた。山腹斜面の薄い表土層とは対照的に,渓流域には厚い渓岸・渓床堆積物が認められ,これが土砂流出の主たる生産源と考えられた。台風の接近,通過時には岩泉町(アメダス岩泉)で最大時間雨量70.5mm/h,総降雨量250.5mm を記録するなど各地で200mmを超える降雨量を記録した。最大時間降雨量の確率年は岩泉町で305年と算定され,現地では極めて激しい短時間降雨が生じた実態が明らかとなった。以上より当域で発生した土砂災害のプロセスを推定すると,台風通過時に生じた短期の集中豪雨は山腹斜面で保水されず,速やかに渓流域へ流出して異常出水が起き,渓岸崩壊や渓床堆積物を巻き込んで大量の土砂流出をもたらしたと考えられた。</p>

収録刊行物

  • 水利科学

    水利科学 63 (2), 109-122, 2019-06-01

    一般社団法人 日本治山治水協会

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