ワクチン接種および全国自然流行で生じた風疹免疫の血清疫学的研究―臨床検査会社のデータを使った解析

書誌事項

タイトル別名
  • A Seroepidemiological Study on the Rubella Immunity Generated by Vaccination and Nationwide Epidemics in Japan : Analysis Using Big Data of a Commercial Diagnostic Laboratory
  • ワクチン セッシュ オヨビ ゼンコク シゼン リュウコウ デ ショウジタ フウシン メンエキ ノ ケッセイエキガクテキ ケンキュウ : リンショウ ケンサ ガイシャ ノ データ オ ツカッタ カイセキ

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抄録

<p>【背景】国民の風疹免疫状況は,ワクチン接種行政と自然流行との両方の影響を受ける.風疹ワクチンは,① 1977 年度から女子中学生へ集団接種,②1995 年度から男女12~15 歳へ個別接種(経過措置),③男女幼児へは1989 年4 月から1993 年4 月の間MMR ワクチン,1995 年度から単味(のちMR)ワクチン接種が行われた.一方,風疹の自然罹患は主に小学校で起こり,その全国的な大流行は1965~68,1976~77,1982,1987~88,1992~93 年の5 回あった.本研究では,全国から当検査会社に集まる多数の血清検体の風疹赤血球凝集抑制(HI)抗体データを男女別,および行政年度出生コホート(出生群)ごとの年齢別に集計した結果が,ワクチン行政および全国自然流行の変遷を説明するかどうかを検討した.<BR> 【方法】健常人血清が多く含まれると思われる「診療科名記載なし」の血清で,2010 年10 月~2018 年9 月採血・検査の8 年分の検体のうち19~60 歳の総計672,531 件(男87,338,女585,193)のデータを集計した.使える検体情報は性別・満年齢・採血年月のみだが,1 年ごとの集計を前年10 月~当該年9 月の年度で行うと,行政年度出生コホートの75%を反映する値になる(伴ら:感染症誌2019;93:1~11).この値を特定行政年度出生コホートの年齢別「近似」抗体保有率および平均抗体価として使った(以下,「近似」は省略).<BR> 【結果】まず集計年度別に,19~60 歳の1 歳ごとの抗体保有率(HI 価≧8)および陽性血清の幾何平均抗体価を計算し,これを出生コホート別・年齢別に並べ替えてグラフを描いた.各コホートで8 歳分の点を結ぶ線を,滑らかにするために5 歳移動平均の線にした.次のことが分かった.1)女子中学生へのワクチン集団接種:1961 年度出生群(ワクチン非接種)の保有率は90%程度であり,接種を受けた1962 年度出生群(1977 年度中学3 年生)で保有率が上昇し,1963~80 年度出生群の保有率は95%程度になった.2)個別接種(1995 年度からの経過措置)を受けた男子:男性の抗体保有率は,1980 年度出生群から1982 年度出生群にかけて90%まで上昇した.1979 年度出生群の保有率は低いままであった.3)風疹全国流行の平均抗体価への影響:1985 年度出生群(最後の全国流行〔1992~93 年〕を小学生時に経験)の平均抗体価は25.4(42)程度であったが,1988 年度出生群(流行の経験なくMMR 接種を受けた)では24.8(28)程度と低かった.<BR>【結論】臨床検査会社の大量の抗体データを男女別,行政年度出生コホート別・年齢別に集計解析した結果は,過去60 年間の日本における風疹の疫学を説明でき,また将来の風疹対策に役立つものであろう.</p>

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 94 (2), 174-180, 2020-03-20

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (1)*注記

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