中小企業にかかわる税務会計上のゆがみ

DOI Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • The Distortion in Tax Accounting Related to Small and Medium Enterprises
  • チュウショウ キギョウ ニ カカワル ゼイム カイケイ ジョウ ノ ユガミ

この論文をさがす

抄録

<p> 中小企業にかかわる会計と税務を取り巻く環境は,近年大きく変化し,複数の問題が存在する。収益認識会計基準について,会計基準を部分的に受け入れつつ,引当金を計上しないなど,間接的に会計利益が歪められる問題がある。また,減価償却等については,法人税法は上限値を定めるにとどまるので,これらの規定が所得の調整弁として機能している実態がある。</p> <p> 資本金と優遇措置規定との間には強い関連性が見られるが,資本金1億円以下の法人層においても1つのピークが見られることが示された。このことは,本来,法人所得計算上資本取引は課税中立的であるものの,法人が資本金をいかに設定するかという判断において,租税特別措置規定による誘因が存在することを含意している。</p> <p> シミュレーションにより,給与による実質的な配当の相対的優位性と,配当二重課税という2 つの問題が存在しており,組織形態に対する中立性が二重に歪められていることを示した。さらに,欠損法人割合が高水準であることについて分析を行い,景気との関連は乏しく,むしろ給与との関連が強いことが明らかとなった。また,欠損金の控除期間制限規定は,所有と経営の同化している法人において,所得金額をマイナス寄りのゼロ近似化させるというバイアスを創出している。</p> <p> 軽減税率には資本蓄積を支援する機能が備わるが,税制が所有と経営の分離していない中小企業の資本停滞を招いており,軽減税率の効果を減殺する。そのため,中小法人という資本金を基準とした規模による一括りでの軽減税率適用ではなく,適用は成長性が期待あるいは予定される法人に限定して,期間や一定の資本充実が達成されるまでの限定的な適用とすべきであり,資本蓄積がなされない法人には,パス・スルー課税が適しているとの結論に至った。</p>

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ