ES細胞から2細胞期様細胞への変換に伴うオルガネラの変化

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  • Organelle changes during the conversion of ES cells to 2-cell stage like cells

抄録

<p>【目的】ES細胞は,胚体外組織への分化能を失った細胞であると考えられてきたが,2細胞期胚において一過的に活性化する遺伝子群を発現する亜集団が存在し,2細胞期胚と類似した遺伝子発現を示すことが報告された。我々は,ES細胞から2細胞期胚様細胞への変換はアスコルビン酸により促進され,インスリンにより抑制されることを見出した。本研究では,ES細胞から2細胞期様細胞の変換に伴う遺伝子発現の変化とオルガネラの挙動について解析を行い,2細胞期様細胞の特性を明らかにすることを目的とした。【方法】実験にはtdTomatoの蛍光により2細胞期様細胞を可視化できるES細胞を用いた。このES細胞を2細胞期様細胞が効率よく誘導できるKnockout Serum Replacementを含む培地で5日間培養し,tdTomato陽性細胞をソーティングして,RNA-seqと電子顕微鏡解析に用いた。一部の実験には,解糖系の阻害剤2DG(2-Deoxy-d-glucose; 0.3–1 mM)または,酸化的リン酸化の阻害剤Rotenone(3–10 nM)存在下で2細胞期様細胞の誘導を行った。【結果】RNA-seqの結果から,2細胞期様細胞では,解糖系に関連する遺伝子発現が顕著に低下する一方で,酸化的リン酸化に関与する遺伝子の発現はほとんど変化しないことが明らかとなった。また,2細胞期様細胞の誘導効率は,2DG存在下ではほとんど変化しなかったが,Rotenone存在下では,有意に低下することが示された。電子顕微鏡解析から,2細胞期様細胞ではES細胞に比べて電子密度の高く内膜が分厚いミトコンドリアが観察された。また,約4割の2細胞期様細胞では,ES細胞には存在せず,卵子に存在するLD(Lipid droplet)を有することが示された。これらのことから,ES細胞から2細胞期様細胞への変換には,エネルギー代謝経路の変換だけではなく,ミトコンドリアの構造の変化やLDの生成などのオルガネラのリモデリングも重要であることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390004222634636160
  • NII論文ID
    130007925717
  • DOI
    10.14882/jrds.113.0_aw1-5
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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