ERVとキメラ転写産物を形成するヒストンアルギニンメチル化酵素Prmt6の機能解析
書誌事項
- タイトル別名
-
- The functional analysis of Protein arginine methylansferase 6 (Prmt6)
説明
<p>哺乳類の初期胚発生において,受精後1細胞期と2細胞期の各割球は胎児と胎盤の両方に分化できる全能性を有するが,発生を進める過程で様々な制御を受け,胚盤胞期には将来胎児となる内部細胞塊(ICM)と胎盤になる栄養膜細胞(TE)に完全に分化する。これはDNAのメチル化やヒストンの化学修飾など,エピジェネティックな修飾の変化によって制御されている。マウスでは2細胞期に於いて胚性ゲノムの活性化(ZGA)が起こり,その後の発生に大きく影響すると考えられている。加えてこの時期には,通常発現が抑制されている内在性レトロウイルス(ERV)領域においても発現が認められ,下流の遺伝子と繋がった形のキメラ転写産物を形成することが報告されている。また,ERVは有胎盤類でゲノム中で広範囲に分布するレトロトランスポゾンで,胎盤形成に関与することも知られている。本研究では,ZGA期にERVとキメラ転写産物として発現し,ヒストンH3の2番目のアルギニン残基のメチル化(H3R2me2a)を触媒する酵素であるPrmt6に着目し,これがICMとTEの分化に関与するという仮説を立て実験を行った。定法に従い,過排卵処理を行った8~12週齢のICRマウスを用いて体外受精を行い,胚盤胞期胚におけるPRMT6とTEマーカーであるCDX2の局在を調べたところ,PRMT6とCDX2が共局在することが明らかになった。次に,体外受精卵を媒精後3時間からPRMT6阻害剤(EPZ020411)を添加した培地(5 µM, 10 µM, 20 µM)で培養し,発生率や形態変化を観察した。その結果,濃度依存的に胚盤胞への発生率が低下し,20 µMの阻害剤処理区では胚が胚盤胞期まで正常に発生することができず,桑実期で発生を停止した。また,8細胞期胚を用いたウェスタンブロット解析では,阻害剤処理によってH3R2me2aレベルの低下が確認できた。以上のことから,ERVとキメラ遺伝子として発現するPrmt6がH3R2me2aを触媒することで胎盤形成に寄与していることが示唆された。</p>
収録刊行物
-
- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
-
日本繁殖生物学会 講演要旨集 113 (0), P-55-P-55, 2020
公益社団法人 日本繁殖生物学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390004222634659840
-
- NII論文ID
- 130007925743
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可