前近代琵琶湖水産資源の採捕と流通

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タイトル別名
  • Characteristics of Pre-modern Fish Consumption and Fishery in Lake Biwa
  • ゼン キンダイ ビワコ スイサン シゲン ノ サイホ ト リュウツウ

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抄録

<p>本稿では,前近代における琵琶湖水産資源の採捕と流通の特質について,特に江戸時代を中心に,文献史料を用いて検討した。</p><p>歴史的にみて,水産資源の価値体系や市場は,各時代の水産資源への嗜好を反映しており、それらは時代によって変化している。前近代の水産資源には,食料にとどまらない政治的意義が付与されていたことが重要である。琵琶湖の水産資源も,古代・中世においては京都の朝廷や寺社へ供進され,江戸時代には江戸幕府へ献上された。これらは権力側から魚種を指定されており,鮎,鯉,鮒の順に時代を追って変遷する。一方で,商品として琵琶湖の水産資源が京都に運ばれていたことは,中世から確認できるが,江戸時代に美味とされた鮒をはじめとする水産資源も,主として京都に運ばれていた。</p><p>政治的資源として,また,食料としても,鮒が琵琶湖水産資源の最高峰であるとする江戸時代の人々の嗜好は,琵琶湖の漁場利用関係にも影響を及ぼした。なぜなら,特に政治の場で必要とされている水産資源の調達には,格別の注意が払われていたからである。このため,鮒をはじめとする高価値の魚介類を,沖漁場で有利に採捕することが可能であった堅田の漁民が,沖漁場への他村漁民の漁業進出を,江戸時代を通して阻止し続けた。結果的に,江戸時代の琵琶湖の漁場利用秩序は,いわゆる旧慣が強固に維持されることとなる。</p>

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