Coexistence method of Habus and People in Amami Oshima Island
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- HASHIMOTO Misao
- Gifu Univ.
Bibliographic Information
- Other Title
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- 奄美大島におけるハブと人びとの共存方法
Description
<p>1.研究の背景</p><p></p><p> 日本においてハブ(Trimeresurus flavoviridis)による咬傷被害は、奄美大島や沖縄で昔から問題とされてきた。ハブによる咬傷から壊死を起こし、場合によっては死亡することもある。現在は、血清が作られたことにより、死亡事故はほぼなくなっているが、ハブによる咬傷被害が毎年一定数発生している。</p><p></p><p> 水上ほか(1978)は、ハブの捕獲数とサトウキビの収量と正の相関関係にあることから、サトウキビの収穫量が餌となるネズミ類の個体数の増減、さらにはハブの個体数の増減に影響を与えていると推測している。千葉・小野寺(1978)は、1950〜70年代のハブ咬傷発生の地域差について、被害発生時の作業状況や産業基盤の違いから説明している。景気低迷期には所得水準の低い地域で販売目的のハブ捕獲が増加し、咬傷被害の増加につながったとしている。ここから、ハブの咬傷被害を単なる自然災害ではなく、ハブと人間との関係性から考察する必要性がある。しかしながら、ハブと人間との関係性を捉える研究は、自然科学分野の研究に比べ蓄積が少ない。これは、ハブの咬傷被害と人間活動との因果関係を実証することの難しさゆえであろう。</p><p></p><p></p><p></p><p>2.研究の目的と方法</p><p></p><p> 本研究は、ハブに対する奄美大島の人びとの対応としての撲滅と棲み分けの観点から、奄美大島におけるハブと人びとがどのように共存しているかについて明らかにすることを目的とする。</p><p></p><p> ここでいうハブの撲滅とは、奄美大島からハブを取り除こうとする行為であり、奄美大島からハブを絶滅させることを意味する。一方、棲み分けとは、奄美大島の各集落からハブを取り除こうとするものであり、ハブの生息空間と人間の生活空間とを分ける行為を指す。集落外にハブが生息することを容認しており、奄美大島からハブが絶滅することはない。</p><p></p><p> 研究方法は、まず統計資料等により、行政によるハブ対策について整理する。次いで、奄美大島宇検村を対象に、GPSを用いた用心棒の分布調査、ハブハンターへのハブ買上げ制度と半専業的な捕獲についての聞き取り調査から地域住民によるハブ対策について分析する。さらには、ハブの製品を販売している業者への聞き取り調査から商品としてのハブ利用について示す。以上より、奄美大島における人びとによるハブとの共存方法について論じる。</p><p></p><p></p><p>考察</p><p> 奄美大島のハブへの人びとの対応は、当初は撲滅を目指し、捕獲を奨励し、マングースを導入するなどの対策を講じてきたが、結果として撲滅することはできなかった。ハブを撲滅することが困難なため、奄美大島の人びとは集落からハブを取り除く方法として、用心棒やハブハンターといった班専業的な捕獲により、棲み分けによるハブとの空間的な分離を選択した。</p><p></p><p> 一方、捕獲したハブを加工した製品を販売することで、経済的利益の源泉としてハブを利用するという複雑な関係性ができあがっている。加えて観光によるハブの商業的利用は、ハブの撲滅が困難なら、むしろ集落へ出没するハブを利用してやろう、という奄美大島の人びとの自然環境に対するたくましさの表れといえよう。</p><p></p><p></p><p></p><p>文献</p><p></p><p>千葉徳爾・小野寺 淳(1978).奄美大島のハブ咬害.東北地理,30(3):117-125.</p><p>水上惟文・小野継男・中本英一(1978).奄美大島におけるハブ捕獲数の周期的変動.爬虫両棲類学雑誌,7(4):81-84.</p>
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2020a (0), 116-, 2020
The Association of Japanese Geographers
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390004951543488000
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- NII Article ID
- 130007949112
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed