ウメ輪紋病の緊急防除における防除範囲の妥当性

  • 山村 光司
    国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農業環境変動研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Appropriate spatial range for emergency control of <i>Plum pox virus</i> (PPV)
  • ウメ リンモンビョウ ノ キンキュウ ボウジョ ニ オケル ボウジョ ハンイ ノ ダトウセイ

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抄録

<p>2009年にウメ輪紋病がわが国で初めて発見され、農林水産省はそれに対する緊急防除を直ちに開始した。この病気はアブラムシによって媒介されるウイルス病であり、病徴が顕在化するまでに 3年程度の潜伏期を要するとされている。このウイルスを根絶するためには病気に感染した樹を完全に排除してゆく必要があるが、そのためには、病徴が確認された樹だけでなく、潜伏期の可能性がある周辺の宿主(病気に感染しうる樹)についても、伐採や移動禁止措置を行う必要がある。 2013年以降のウメ輪紋病の緊急防除において半経験的に用いられてきた防除範囲の半径は 500 mであった。アブラムシの非ランダム拡散を考慮したガンマモデルを用い、感染樹が発見された時点(3年後)における周辺の感染確率を推定したところ、 500 m地点における感染確率は 0.5%程度と推定され、この防除範囲の設定は妥当であったことが示唆された。また、防除範囲内の病樹を完全に伐採する場合に、病気の基本再生産数を 1以下に保つのに必要な半径は 607 mと推定された。今後にウメ輪紋病の「低発生地域」を構築する際にも、「周辺地区」として 500 m幅のバッファーゾーンを設ければ、「中心地区」を清浄に保つことができると期待される。</p>

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