胎児期に多脾症候群を疑ったことで出生後に中腸軸捻転を迅速診断できた1例

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Midgut Volvulus Diagnosed Rapidly after Birth Due to Suspected Polysplenia Syndrome During Fetal Life
  • タイジキ ニ タヒショウコウグン オ ウタガッタ コト デ シュッショウゴ ニ チュウ チョウジク ネンテン オ ジンソク シンダン デキタ 1レイ

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抄録

<p>症例は生後0日の女児,在胎35週1日に施行した胎児超音波スクリーニング検査にて,腹部大動脈の右側に下大静脈は描出できず,腹部大動脈の左側を左心房背側まで走行する半奇静脈から左上大静脈,冠状静脈洞,右房に連続する奇静脈・半奇静脈結合を認め多脾症候群を疑った.その他の心血管疾患や消化管疾患を疑う所見は認めなかったが,合併症の可能性について臨床に提言した.出生3時間後から胆汁性嘔吐を繰り返し,出生13時間後に浣腸施行にて血便を認めた.そのため合併の可能性のある腸回転異常症から中腸軸捻転の発症を疑い,腹部超音波検査にて上腸間膜静脈が上腸間膜動脈周囲を取り囲み旋回していること(whirlpool sign),腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に十二指腸水平部が同定できないこと,右下腹部に明らかな上行結腸と思われる腹壁に固定された腸管を認めないことから中腸軸捻転と診断した.手術にて腸管は反時計方向に270度回転しており,腸回転異常に伴う中腸軸捻転と診断され,腸回転異常根治術が施行された.中腸軸捻転は,生後1週間以内に胆汁性嘔吐,血便で発症することが多く,広範な腸管壊死をきたし緊急手術を要することがあるため正確かつ迅速な診断が求められる.今回,胎児期から新生児期までを一連の関連疾患として捉えることで周産期医療に超音波検査を介して貢献することができた.また迅速診断に腹部超音波検査が有用であった.</p>

収録刊行物

  • 超音波検査技術

    超音波検査技術 46 (1), 29-35, 2021-02-01

    一般社団法人 日本超音波検査学会

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