電磁探査法による温泉水の流動経路の推定―山口県湯田温泉における適用―

書誌事項

タイトル別名
  • Hot spring water flow path estimated by electromagnetic survey -An example in Yuda Hot Spring, Yamaguchi Prefecture-
  • デンジ タンサホウ ニ ヨル オンセンスイ ノ リュウドウ ケイロ ノ スイテイ : ヤマグチケン ユダ オンセン ニ オケル テキヨウ

この論文をさがす

説明

<p> 山口県山口市の湯田温泉は平野部に湧出するアルカリ性単純温泉であり,1日2,000tの豊富な湯量であるが,その温泉水の流動経路は明らかにされていない。本研究では,温泉水の水質分析とともに,湯田温泉周辺の地質試料の比抵抗測定,電磁探査法による比抵抗構造の把握,泉源ボーリングのコア観察,および数値シミュレーションを実施し,温泉水の流動経路を検討した。電磁探査の結果,基盤岩とそれを覆う堆積層との比抵抗のコントラストが確認でき,湯田温泉地域を横断する複数の断層に挟まれた領域において基盤岩上面が陥没している様子が認められた。しかし,温泉水の流動経路を示す比抵抗構造を得ることはできなかった。温泉水の電気伝導度(EC)を測定したところ,100mS/m程度と周囲の岩盤地下水と比較して一桁程度高い値を示した。岩石試料の比抵抗測定試験より,温泉水と岩盤地下水が,それぞれ基盤岩を構成する岩石の間隙水として存在した場合,温泉水を間隙水とした岩石試料の比抵抗が岩盤地下水を間隙水とした岩石試料の比抵抗と比較して1/2程度になることが分かった。泉源ボーリングのコア観察の結果,コアの大部分を硬質な砂質片岩および泥質片岩が占めており,割れ目の頻度は1.25本/mと極めて低い。一方,幅約0.6mの石英斑岩が高角度で貫入する部分では割れ目が発達していることから,石英斑岩などの貫入岩中の割れ目が温泉水の流動経路として機能している可能性がある。これらの結果を踏まえ,湯田温泉の地質モデルを構築し数値シミュレーションを行ったところ,流動経路と考えられる貫入岩の割れ目卓越部の幅が100m以下の場合,比抵抗探査による検出は困難と考えられた。以上より,湯田温泉の温泉水の流動経路の幅は100m以下であると考えられる。</p>

収録刊行物

  • 物理探査

    物理探査 74 (0), 1-16, 2021

    社団法人 物理探査学会

参考文献 (12)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ