武蔵野台地のコナラ二次林における植物機能群による林床管理の影響評価の有効性

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タイトル別名
  • Effects of vegetation management on plant species composition and plant functional composition in <i>Quercus serrata</i> secondary forests on the Musashino terrace
  • ムサシノ ダイチ ノ コナラ ニジリン ニ オケル ショクブツ キノウグン ニ ヨル リンショウ カンリ ノ エイキョウ ヒョウカ ノ ユウコウセイ

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抄録

<p>1. 武蔵野台地北部のコナラ二次林の異なる林床管理を行う林分で,植物の種組成と機能群組成に対する管理の影響を明らかにし,管理されたコナラ二次林に典型的な植物の機能群を抽出して,機能群による管理の影響評価の有効性を検討した.林床管理は管理強度の強い方から下刈り・落葉掻き,下刈り,常緑樹除伐の3つであり,これらと管理の停止された林分で比較した.</p><p>2. 植物の機能特性としてラウンケアの休眠型,葉の生存季節,生育型,地下器官型,花粉媒介,開花季節,種子散布型,結実季節,種子重を用いてクラスター解析を行い,7つの植物機能群(PFG)に分類した.</p><p>3. 管理強度が強いほど低木層の出現植物種数が少なく,逆に草本層の出現植物種数が多く,種多様度は高かった.植生管理による影響は,種組成よりも機能群組成の方に強く表れており,管理タイプによって種数が有意に異なるPFGがみられた.</p><p>4. 管理タイプ間でPFG種数に有意な違いがみられたのは,PFG2(春開花春結実の叢生草本種群)とPFG5(秋結実の風散布型夏緑草本種群),PFG6(春開花虫媒草本種群),PFG7(秋結実の夏緑草本種群)で,いずれも管理強度の強い方で種数が多い傾向にあった.</p><p>5. PFG2, PFG5, PFG6は管理されたコナラ二次林に典型的な草本種を,PFG7は人里生草本種を多く含んでいた.このことから管理されたコナラ二次林に典型的な植物の機能群としてPFG2, PFG5, PFG6が抽出された.PFG2, PFG5, PFG6はPFG7よりも種子重1mgの種の割合が高いことから,落葉掻きによって種子が発芽成長しやすくなる機能群であると考えられた.</p><p>6. 常緑樹の除伐をした林分では,放置された林分に比べ,コナラ二次林に典型的な種を含むPFG4(春開花夏緑木本種群),PFG5, PFG6の種数が多かった.しかし,PFG2とPFG6の種数は,下刈りと落葉掻きをした林分でより多かったことから,下刈りと落葉掻きを合わせて行う方がコナラ二次林構成種の種多様性保全に効果的と言える.</p><p>7. 遷移の進行を指標する種や緑化・園芸種を含むPFG1(被食散布型の常緑植物種群)の種数は管理タイプ間で違いがなかった.PFG1のような鳥類等に散布されうる被食散布型の常緑植物の種数を植生管理により減少させることは難しいため,周辺に植栽しないことが重要と言える.</p><p>8. 以上のことから,本研究はコナラ二次林において植物の種組成だけでなく,機能群組成によって評価することで,林床管理方法による種多様性の保全効果の違いとその要因をより明確にできることを示した.</p>

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