海外原産の毒ヘビ咬傷の治療経験

  • 川岸 利臣
    富山大学附属病院 災害・救命センター
  • 若杉 雅浩
    富山大学附属病院 災害・救命センター 富山大学医学部救急・災害医学講座 富山大学学術研究部医学系 危機管理医学・医療安全学
  • 波多野 智哉
    富山大学附属病院 災害・救命センター
  • 澁谷 忠希
    富山大学附属病院 災害・救命センター
  • 桑野 博之
    富山大学附属病院 災害・救命センター

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説明

20代の男性。飼育していたパフアダーに左手背をかまれて受傷し救急要請された。救急隊接触時には腫脹は軽度であったが、当院救急外来到着時には手背は高度に腫脹し、前腕まで拡大傾向であった。局所所見は著しいものの、バイタルには問題がなく、血液検査も特に問題は認めなかった。<br> パフアダーは主にアフリカに生息する毒ヘビで、非常に高い毒性が報告されている。本邦においてパフアダー毒に対する抗血清は存在せず、日本国内における治療報告も検索した範囲で認められなかった。そのため、一般的な毒ヘビ咬傷治療と対症療法を開始した。経過中に凝固異常および高度の浮腫が出現したため、凝固異常に対して遺伝子組み換えヒトトロンボモジュリン投与、手指末梢組織の浮腫及び虚血に対して高気圧酸素療法を行った。経過中に呼吸不全を一時呈したものの、第12病日には病状改善し一般病棟に転出。第14病日には受傷部位の軽度運動障害が残存したものの臓器障害を残すことなく独歩退院となった。現在上肢の運動機能改善のためにリハビリ通院中である。<br> 厚生労働省の統計によれば日本における「毒ヘビ及び毒トカゲとの接触」による死者数は近年減少傾向であるものの現在でも数名報告されている。近年死者数が減少している要因として日本で問題となる毒ヘビであるマムシ、ハブには抗毒素血清が存在していることや医療体制が充実してきたことが考えられる。一方でパフアダーなどの海外産の毒性生物に関しては治療薬もなく治療成績も少ない。パフアダーは特定生物に分類され、現在新たな飼育は禁止されているが、飼育中である場合は継続飼育が可能となっている。そのため本症例のような毒性の高い毒ヘビ咬傷がこれからも発生する可能性があり、本例の治療経過は極めて貴重と考えられたので報告する。

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