胃切除後異時性多発胃癌の実態に関するアンケート調査解析
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- 阿部 展次
- 杏林大学医学部 消化器・一般外科
書誌事項
- タイトル別名
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- The incidences of metachronous multiple gastric cancer after various types of gastrectomy:analysis of data from a nationwide Japanese survey<sup>1)</sup>.
説明
<p>【背景と目的】胃癌に対する外科的胃切除術後の異時性多発胃癌の発生に関する多施設・多数例での検討は行われていない.本研究では,多施設から集積した症例を用い,胃切除術後の異時性多発癌の発生状況と治療内容を明らかにし,胃切除術後の適切なフォローアップ法を考察することを目的とした.</p><p>【対象と方法】本研究は,胃外科・術後障害研究会の施設会員・個人会員を対象にアンケート調査を行い,各施設の結果を集計する後ろ向き疫学調査である.対象は各施設で2003年から2012年の期間に胃癌に対する手術が施行された症例とし,術式別の異時性多発胃癌の実数や発生時期,治療内容などが評価項目とされた.</p><p>【結果】52施設から33,731例の胃切除例が集められ,うち,5年を越える期間でフォローアップされていた症例は24,451例であった.異時性多発胃癌の発生率は,幽門側胃切除術で2.4%,幽門保存胃切除術で3%,噴門側胃切除術で6.3%,機能温存胃切除術(分節切除術と局所切除術)で8.2%であった.幽門側胃切除術においては,Roux-en-Y再建における異時性多発胃癌の発生率は他の再建法(Billroth-Ⅰ法,Billroth-Ⅱ法)より有意に低率であった(それぞれ1.6%,2.7%,3.2%).他の術式では,再建法による異時性多発胃癌の発生率に有意差は認めなかった.36.4%の症例で,異時性多発胃癌発生のタイミングは術後5年を越えていた.また,異時性多発胃癌に対する治療としては,噴門側胃切除術や機能温存胃切除術で高率にESDが選択されていた(それぞれ50.8%,67.9%).</p><p>【結論】残胃を大きく残す術式(噴門側胃切除術や機能温存胃切除術)における異時性多発胃癌の発生頻度は幽門側胃切除術後より有意に高率であるが,ESDで治療可能な場合も多い.また,異時性多発癌の発生は,術後5年を過ぎてもなお高率に認める.したがって,胃癌術後では長期の内視鏡サーベイランスによる残胃モニタリングが重要であることが示唆された.</p>
収録刊行物
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- 日本消化器内視鏡学会雑誌
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日本消化器内視鏡学会雑誌 63 (2), 242-242, 2021
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390005667264618752
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- NII論文ID
- 130007989765
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- ISSN
- 18845738
- 03871207
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可