化膿性脳室炎を併発した重症くも膜下出血の一例

  • 黒田 祐輔
    三重大学大学院 医学系研究科脳神経外科 三重県立総合医療センター 脳神経外科
  • 芝 真人
    三重大学大学院 医学系研究科脳神経外科
  • 市川 智教
    伊勢赤十字病院 脳神経外科
  • 畑崎 聖二
    三重大学大学院 医学系研究科脳神経外科
  • 当麻 直樹
    三重大学大学院 医学系研究科脳神経外科
  • 鈴木 秀謙
    三重大学大学院 医学系研究科脳神経外科

書誌事項

タイトル別名
  • A case of pyogenic ventriculitis after severe subarachnoid hemorrhage
  • カノウセイ ノウシツエン オ ヘイハツ シタ ジュウショウク モ マク カ シュッケツ ノ イチレイ

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抄録

<p> 60歳代男性.脳梁出血,脳室内出血を伴うくも膜下出血(WFNSグレード5)にて入院.左遠位部前大脳動脈部の破裂動脈瘤に対して開頭脳動脈瘤トラッピング術,急性水頭症に対して脳室ドレナージ術を施行した.術後,カルバペネム耐性腸内細菌による肺炎・敗血症を併発し抗生剤治療を要した.脳室ドレナージを継続し,適宜ドレナージチューブを入れ替えたが,第36病日に髄液細胞数の増加を認め,髄膜炎と診断した.第40病日のMRIでは,脳梁出血,脳室内出血が存在していた部位に拡散強調画像で高信号を示すmassを認め,造影CTでは,脳室の全周性造影効果を認めた.化膿性脳室炎と診断し,内視鏡下脳室内膿瘍除去術を行った.膿瘍には被膜形成が認められ,脳室から孤立化していた.その後も水頭症は改善せず,脳室ドレナージの入れ替えや第三脳室底開窓術を行ったが,最終的に水頭症コントロール不良となり,第95病日に死亡した.化膿性脳室炎は死亡率が高いため,早期診断と積極的な抗生剤治療及び外科的治療が望ましい.しかし本症例のように脳室内膿瘍が被膜形成で孤立化している場合は,髄液細胞数の最大424/μlと必ずしも髄液細胞数の著明な増加を伴わず,早期診断が難しいと考えられた.また脳室内出血を伴う疾患で長期にわたり脳室ドレナージを行なっている場合,本症例のように脳室内の血腫が培地となって膿瘍に変化しうるため,血腫があった部分のmassの増大や,MRI信号の変化の有無を含め総合的にフォローアップすることが重要と考えられた.</p>

収録刊行物

  • NEUROSURGICAL EMERGENCY

    NEUROSURGICAL EMERGENCY 26 (1), 80-87, 2021

    特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency

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