米国における「災害検証」とは何か

  • 永松 伸吾
    関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科 国立研究開発法人 防災科学技術研究所・災害過程研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • ベイコク ニ オケル 「 サイガイ ケンショウ 」 トワ ナニ カ

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説明

<p>米国において我が国の災害検証に直接相当するものがあるわけではないが、当事者や所管省庁による自己評価は日常的に行われている。米国において特徴的なのは立法機関の力が強く、連邦議会の要請に応じて会計検査院(GAO)による調査が行われる。さらに2005年のハリケーン・カトリーナ災害のように、国家の危機管理に深刻な影響を与えた災害については上院、下院それぞれの内部に調査委員会が設置される。これらは司法からも独立し、超党派により政治的なバイアスも極力排除し、かつ法的な調査権限も有している。しかしながら、日本のように地方自治体レベルで行政が主体となって調査委員会を設置するケースは見当たらない。そもそも米国では災害に対して行政の責任は限定的に捉えられているうえ、他方で大量の訴訟の当事者ともなりかねない地方政府が、調査権限もない検証委員会を設置する積極的な理由はない。日本における自治体による検証の乱立は、行政への無謬性への過度な期待によるものと考えられる。</p>

収録刊行物

  • 災害情報

    災害情報 17 (2), 53-56, 2019

    日本災害情報学会

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