急速進行性の肺高血圧症をきたした,若年担癌患者の1例

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  • A case of rapidly progressive pulmonary hypertension with a young tumorbearing patient

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抄録

<p> 症例は43歳男性,既往歴はなし.3カ月前からの血便に対して他院で施行された下部内視鏡検査にてS状結腸癌が疑われ,当院へ紹介された.1カ月前から労作時呼吸困難も自覚しており,初診時はSpO2 87%と酸素化不良であった.心エコー検査ではLVEF 70%,推定右室圧70 mmHg,著明な肺高血圧と左室圧排所見を認めた.造影CTでは明らかな肺動脈内血栓を認めず,原因不明の肺高血圧症としてICUへ入床した.血液検査でD-dimer値 34.3 μg/mLと上昇しており,微小血栓の関与を考え抗凝固療法と,右心不全に対してドブタミン投与を行ったが,第3病日に急激な血圧低下をきたし,心肺蘇生に反応なく死亡に至った.病理解剖では肺小動脈に腫瘍塞栓と,内膜肥厚や再疎通像を伴う血栓を認め,肺腫瘍塞栓性微小血管症と考えられた.免疫染色ではVEGFおよびVEGF受容体が陽性であった.本疾患は臨床像として急速進行性の肺高血圧が特徴であり,死亡率は非常に高いとされる.近年,症例報告も散見され認識が高まってきているが,依然として確立された治療法はない.本症例では一部で有効性が報告されているVEGFを標的とした薬物療法等の治療介入ができないまま不幸な転帰をたどったが,特徴的な臨床像から本疾患を想起し,早期介入することが重要と考えられ,文献的考察を交えて報告する.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 52 (2), 162-168, 2020-02-15

    公益財団法人 日本心臓財団

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