屋久島のニホンザルにおける多様な型の抱擁行動の社会的学習過程

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タイトル別名
  • Social learning process of multi-types of embracing behavior in Japanese macaques of Yakushima

抄録

<p>近年の動物の文化的行動の研究では、動物はいつ・どのように・誰から社会的に学習するのかという社会的伝達の議論が活発に行われている。発達的観点からの文化的行動の研究は、文化的行動の維持・発現要因を明らかにする点で重要である。しかし、ひとつの群内で多様な型が維持されている文化的行動である社会行動の研究は少ない。ニホンザルの文化的行動である抱擁行動は、屋久島で複数の型が見られる。本研究では、屋久島のニホンザルは、どのように多様な型の抱擁行動を学習しているのかを解明することを目的とした。 2018年8月から10月、2019年10月から12月の間に、鹿児島県屋久島西部地域の海岸域に生息するヤクシマザルのUmi-A 群を対象に、追跡個体の周囲10ⅿ以内で生じた抱擁行動について全生起サンプリングを行った。その観察された2個体間の抱擁行動の中で、抱擁行動を行ったペア、抱擁行動を開始した個体、抱きつきの方向を記録した。460事例の抱擁行動が観察された。全事例の中で、未成熟個体(4歳未満)は成熟個体(4歳以上)よりも正面同士の型で抱擁行動をする割合が多かった。さらに正面同士の型以外で行われた成熟個体と未成熟個体のペアをみると、成熟個体がイニシアティブをもって抱擁行動を行った。成熟個体の抱擁行動には緊張緩和機能があることが知られている。正面同士の型は、母子間の抱きつきと類似しており、授乳時にはオキシトシンが分泌され、母子間の絆が形成される。このことから、未成熟個体はまず正面同士の型で抱擁行動をすることを学習し、緊張緩和している可能性がある。さらに未成熟個体は、成熟個体がイニシアティブをもった抱擁行動から多様な型を学習していることが示唆された。屋久島のニホンザルは、自分の腹を相手にあてることをまず学習し、成熟個体との関わりの中で多様な型の抱擁行動を学習しているのかもしれない。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390006308199618688
  • NII論文ID
    130008029166
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_37_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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