1900年代前半の黒部峡谷(富山県東部)のニホンザルの分布

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タイトル別名
  • Distribution of Japanese monkeys (<i>Macaca fuscata</i>) in Kurobe Gorge, eastern Toyama Prefecture, central Japan during the first half of the 1900s

抄録

<p>1900年代前半の黒部峡谷(富山県東部)に生息していた哺乳類について、その種類や生息範囲、生息数などの具体的な情報は、ほぼ皆無の現状にある。これまで確認した限りにおいて、研究者による研究報告は天然記念物研究報告の鏑木(1934)が唯一である。ここでは、当時の登山家が記した山行記録から哺乳類に関する記録を抜き出し、当時の黒部峡谷における哺乳類相の可視化を試みた。 使用した主たる資料は、日本山岳会発行の「山岳」(1906 -2006)と、登山家のまとめた単行本である。山行記録中の哺乳類の記述は行程に組み込まれていることから、日時と場所を読み取り可能な情報が多い。また、登山家に雇用された山案内人は、猟師や釣り師を生業としていた人々であった。 山案内人は、登山家に狩猟を含め様々な哺乳類に関する情報を登山家に伝え、登山家はそれら情報を登山記録中に書き記した。 山行記録中から抽出できた哺乳類種は、イノシシ、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、ニホンザル、ニホンテン、タヌキないしアナグマ、ニホンノウサギ、ニホンリス、ムササビ、翼手類の一種であった。抽出した記録のほとんどは、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、ニホンザルの3種で、比較的目立つ中・大型哺乳類種であることに加え、当時の狩猟対象であったことも、記録数の多い要因に挙げられる。 1900年代前半の黒部峡谷において、ニホンザルの確認地点は主に欅平より下流域で、上流の下廊下では2地点のみであった。当時のニホンザルの分布は、1980年代におけるニホンザルの群れ分布(赤座、2002)に、支流の黒薙川上流に位置する柳又谷での記録を除き、大まかに含まれている。また、ニホンザルによる洞窟利用(井上、1910;柏木ほか、2012)と温泉利用(山田、1920;八尾、2017)が、山行記録中に記されていた。本発表では以上の内容に加え、登山家の執筆した山行記録を利用する上での利点と欠点も合わせて議論する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390006308199844096
  • NII論文ID
    130008029045
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_26_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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