口唇口蓋裂のための新しい形態解析

  • 髙橋 夏子
    京都大学大学院医学研究科形成外科学 京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター
  • 勝部 元紀
    京都大学大学院医学研究科形成外科学
  • 森本 尚樹
    京都大学大学院医学研究科形成外科学

書誌事項

タイトル別名
  • Shape Analysis of Cleft Lip and Palate Using Geometric Morphometrics
  • 〜幾何学的形態測定学〜

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説明

口唇口蓋裂の診療において口や鼻の「かたち」を客観的に評価するには定量的な解析が必要である。形態の定量化解析は,点と点の間の距離や角度などを測定することで可能になるが,数値化できる情報量は限定的で,「かたち」の全容を評価できているとは言い難い。本稿で紹介するGeometric morphometrics(幾何学的形態測定学;以下,GM)は,「かたち」の特徴を示す標識点(ランドマーク)や輪郭を座標値や関数に変換し,多変量解析を行うことにより形態の特徴を数学的に捉える方法である。この方法では,点同士の空間的な位置関係を維持したまま解析できることや,複雑な形状を含む形態も解析対象にできること,解析結果を画像や動画で再現することができることなどが利点として挙げられ,「かたち」そのものを評価することが可能となる。GMは1980年代に確立された比較的新しい解析方法であり,特に近年はコンピュータ技術の発達や,GMを容易に扱えるソフトウェアの出現によりさらに普及が進んでいるが,医学分野での研究報告例は残念ながらまだ多くない。口唇口蓋裂では鼻や口,上顎など複数の器官の形態異常を合併しており,顔全体のバランスの変化や,カーブや突起を含む微妙な形状変化など,従来の解析方法では扱い難かったこの領域の分析において,GMの長所が最大限に活用できると考えている。本稿では,GMの概念や使用するソフトウェアについて要点を説明するとともに,口唇口蓋裂に関するGMの研究例を紹介し,顔面の定量分析分野の発展に寄与したいと考えている。

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