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- 脇山 真治
- マルチ映像研究スタジオわきすた
書誌事項
- タイトル別名
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- The Essential Problem of Archive of Images Produced for the Exhibition
- 展示映像アーカイブの本質的問題 : なぜ上映作品は残されていないのか
- テンジ エイゾウ アーカイブ ノ ホンシツテキ モンダイ : ナゼ ジョウエイ サクヒン ワ ノコサレテ イナイ ノ カ
- Why isn’t the screening work left?
- ~なぜ上映作品は残されていないのか~
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抄録
展示映像とは見本市や博覧会等のイベント、博物館等の文化施設などに使われる映像の総称である。映画は世界共通の技術仕様があり、その限りでは後年のオリジナル上映も可能である。社会的評価も確立しており、研究対象としても多くの保存資料が活用されている。しかし展示映像には世界標準が存在せず、イベントで使われる一回性の映像という認識が強く、ほとんど保存されることはない。展示映像は映画とほぼ同じような歴史をもち、また同時代の展示手法や表現技術の最先端を擁していながらこれらがなぜ保存されていないのか。その理由を明らかにすることが本研究の目的である。さらに将来的には展示映像のアーカイブの実現へ向けた課題の抽出を遠望して本研究をスタートさせた。 展示映像は映画の発明の直後、1900年のパリ万国博覧会から登場している。映画が登場の当初から今日に至るまで国際的にアーカイブが進んでいるのと対照的に、展示映像はほとんど残されずにきた。それは展示映像が映像と音響だけでなく、スクリーンデザイン、上映空間の形状、特殊効果などのビジュアルデザインの総合として存在しており、そのすべての構成要素を何らかの方法で残さない限り、アーカイブとして完結しないという困難な対象でもある。本研究では日本万国博覧会(1970年:以降日本万博)、国際科学技術博覧会(1985年:以降つくば科学万博)、東京国際フォーラム等で制作された作品の追跡調査から、その理由を明らかにした。その着目点は上映システムが複雑であること、一つの作品の中に複数の素材・仕様が混在していること、保存のための推進組織がないこと、作品ごとに独自のシステムが計画されており標準化したアーカイブシステムが構築できないことなど、8つの側面である。 展示映像は同時代の最も先端的なコンテンツと技術を統合した作品だが、ことに「イベント映像」の側面が強いという特徴から、再演・再現は当初から前提にない。しかしながら、一方では、優れた作品が博覧会の期間を超えて保存され、擬似的な再演でも可能ならば、博覧会に参加できない多くの人々に、作品のコンセプトやメッセージを継続的に配信することができ、何よりも将来の展示映像の研究者、制作者にとって有益な資料となると思われる。
収録刊行物
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- 芸術工学会誌
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芸術工学会誌 82 (0), 30-37, 2021
一般社団法人 芸術工学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390006432293635584
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- NII論文ID
- 130008033342
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- NII書誌ID
- AA11876913
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- ISSN
- 2433281X
- 13423061
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- NDL書誌ID
- 031458838
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可