異所性脂肪と肝疾患

  • 伊藤 美智子
    神奈川県立産業技術総合研究所「貼るだけ人工膵臓」プロジェクト 名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野

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抄録

 肥満人口の増大に伴って, 過栄養による肝異所性脂肪蓄積を基盤とする非アルコール性脂肪性肝疾患 (non‐alcoholic fatty liver disease:以下NAFLD) が世界的に増加している. NAFLDの中で単純性脂肪肝は一般的に予後良好であるが, 炎症・線維化を特徴とする非アルコール性脂肪性肝炎 (non‐alcoholic steato‐hepatitis: 以下NASH) は肝硬変・肝細胞癌に進展する重症型である. 単純性脂肪肝では主に細胞保護的な中性脂肪が蓄積するのに対し, NASHではコレステロールをはじめとする細胞障害性のある脂質の増加が指摘されている. これらの脂質がもたらす「脂肪毒性」は肝細胞死を誘導するだけでなく, 間質細胞における炎症・線維化促進経路を活性化することでNASHの病態形成に寄与すると考えられる. 特にマクロファージは死細胞の貪食にあたることから, 死細胞に由来する脂質がマクロファージの疾患特異的活性化を制御する可能性がある. 異所性脂肪蓄積の分子メカニズムと脂肪毒性の本態を理解することで, NASH発症機構の解明と新規治療標的の探索に繋がると考えられる.

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