真珠層内に分泌された異質層の影響

書誌事項

タイトル別名
  • The effect of the heterogeneous layer secreted in the nacreous layer

説明

<p>九州のある養殖場で、今年多かったとされる数種の不良真珠について、構造からその発生時期や要因を探ることを目的として観察分析を行ったので報告する。また、既報告※1の実験データ等より、その発生要因を考察した。</p><p>試料とした不良珠は、養殖場での分類で①塩かぶり②シワ③ボケと呼ばれる3 種類で、表面観察、断面観察を行い、その構造を分析した。</p><p>①塩かぶり</p><p>真珠表面に白い斑点が付着している。</p><p>断面の薄片を観察すると、真珠層の深層から表面まで、黒色部が数多く存在し、電子顕微鏡で拡大するとその黒色部に異質層が確認できた。</p><p>②シワ</p><p>真珠半面の表面が大きくうねっている。薄片で、表面のうねった箇所は核と真珠層の境界部に大きな稜柱層と大きな黒色部があり、稜柱層の少ない箇所は、シワが現れていなかった。電子顕微鏡での観察で大きな黒色部は、真珠層が乱れて積層していることが確認された。</p><p>③ボケ</p><p>いわゆるボケ珠で、表面が擦りガラスの様に白くなっている。薄片ではその特徴が確認できなかったが、電子顕微鏡で結晶層を観察すると、ごく表層部に薄い異質層や柱状構造が確認できた。</p><p>今回観察した試料では、いろいろな形態の不良として現れているが、不良の要因は養殖期間中の異質物の分泌によるものであり、その分泌時期は、養殖初期から浜揚げ直前まで様々であった。</p><p>真珠層を分泌する部位の外套膜は、貝殻が損傷し再生する際に有機物、稜柱層を分泌して損傷を修復し、その後真珠層を分泌するようになることが明らかにされている※2。また、養殖時、真珠袋の一時的な変質により稜柱層が分泌されると言われている。2019 年9 月から2020 年3 月に行った浜揚げ実験210 貝の中で浜揚げ時に真珠表面に異質層が露出している5つの真珠の母貝を見ると、外套膜が縮むなどの貝が多く、養殖中期から浜揚げ直前の母貝の衰弱状態が不良真珠産出の要因のひとつであると確認できた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390007515115658240
  • NII論文ID
    130008072406
  • DOI
    10.14915/gsj.43.0_67
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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