神経変性疾患ALSに対するメタロチオネインの防御作用: SOD1タンパク質の凝集化抑制

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タイトル別名
  • Metallothionein-I protects against pathological aggregation of SOD1 associated with amyotrophic lateral sclerosis

抄録

<p> 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経の変性により、筋萎縮や呼吸不全が生じる神経変性疾患である。ALSの運動神経や周囲のグリア細胞にはSuperoxide dismutase-1(SOD1)タンパク質が凝集体として異常蓄積しており、神経変性の原因とされている。正常型SOD1はCu/Znと結合し構造安定性が増す。一方、凝集化したSOD1はCu/Znと未結合であることから、正常型SOD1からのCu/Znの解離がSOD1の凝集化に必須であると考えられている。Metallothionein-I(MT-I)はCu/Zn結合タンパク質であり、それら金属イオンの恒常性制御を担うため、演者らは「MTでSOD1タンパク質の凝集化を抑制できるのでは」と仮説を立て、以下の研究を進めてきた。</p><p></p><p>MT-IによるSOD1タンパク質の凝集化の抑制</p><p> ALS患者やモデルマウスのグリア細胞において、MT-IはSOD1と共凝集しており、両者の分子レベルでの相互作用が示唆された。演者らは、SOD1の凝集化を試験管内で再現できる系を確立しており、その系を用いて、MT-IがSOD1の凝集化を抑制できるか評価した。その結果、MT-Iが結合する金属イオンの種類(Zn結合型、Cu結合型、アポ型)によって、MT-Iの凝集抑制効果が異なることが判明した。</p><p></p><p>LRP2を介したMT-Iの神経内移行とSOD1の凝集抑制</p><p> SOD1凝集体は病初期には運動神経のみに蓄積するが、病態進展と共に周囲のグリア細胞にも蓄積する。他方でMT-Iはグリア細胞に発現するが、運動神経には存在しない。演者らは「MT-Iを本来、存在しない運動神経内に移行できれば、運動神経内でのSOD1の凝集化を抑制できるのでは」と考えた。そこでMT-Iの細胞内移行に関与する受容体LRP2(LDL receptor-related protein 2)に着目し、細胞レベルの検討を行った。その結果、運動神経のLRP2は薬理学的に誘導可能なこと、LRP2の誘導によりMT-Iの運動神経内への移行が増加すること、移行したMT-IはSOD1の凝集化を抑制する知見を得ることができた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390007536268381696
  • NII論文ID
    130008073891
  • DOI
    10.14869/toxpt.48.1.0_s25-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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