シスプラチンの近位尿細管領域特異的毒性発現とその機序の検討
書誌事項
- タイトル別名
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- Proximal tubular region-specific toxicity of cisplatin and investigation of its mechanism
抄録
<p>シスプラチン(CDDP)は、副作用として腎障害を起こす抗がん剤である。近位尿細管のS3領域を特異的に障害することが報告されているが、その動態や機構は明らかになっていない。当研究室では、マウス近位尿細管S1, S2, S3領域由来不死化細胞を用いた検討により、様々な白金錯化合物の曝露により細胞毒性がS3細胞で最も強く現れることを明らかにした。この機構を解明するため、細胞内におけるCDDPの代謝物を同定する系を検討し、CDDPの近位尿細管領域特異的な毒性発現機構の解明を目指している。</p><p>S1, S2, S3細胞において、1, 3, 6日いずれの曝露時間においてもS3細胞の細胞毒性が最も高かった。しかしこの差は、各細胞へのPtの取り込み効率および蓄積量では説明できなかった。また、CDDPは短時間で取り込まれ、速やかに排泄されることが分かった。細胞内Pt取り込み量を検討したところ最も高値を示すのが曝露後15分であったことから、S1, S2, S3細胞にCDDPを15分曝露し、培地交換48時間後に細胞生存率を比較した。その結果、15分間のCDDP曝露によっても、S3細胞の細胞毒性が最も高かった。よって、CDDPが細胞内取り込まれた後の初期に起こる何らかの変化がS3細胞特異的な細胞毒性に関与している可能性が示唆された。CDDPの動態にはグルタチオン(GSH)抱合が重要な役割を果たす可能性がある。CDDPのGSH抱合体の輸送および動態を解析するため、HPLC-ICP-MSおよび放射光施設SPring-8にてXAFS測定にてCDDPのGSH抱合体の調製と検出を試みた。Pt近傍の配位子との距離などの解析によりCDDPとは異なる化合物が確認できた。</p><p>今後、細胞内でのCDDPの化学形態変化、および排泄された際の形態解析などを行い、CDDPの形態変化がS3領域特異的な毒性発現に関与している可能性を検討したい。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 48.1 (0), S18-3-, 2021
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390007536269511424
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- NII論文ID
- 130008073936
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可