集落営農法人における経営多角化の意義と課題

書誌事項

タイトル別名
  • The significance and issues of business diversification of the community based farming
  • 集落営農法人における経営多角化の意義と課題 : 山形県複合農業地域における集落営農法人を事例に
  • シュウラク エイノウ ホウジン ニ オケル ケイエイ タカクカ ノ イギ ト カダイ : ヤマガタケン フクゴウ ノウギョウ チイキ ニ オケル シュウラク エイノウ ホウジン オ ジレイ ニ
  • -A case study on the multi farming area in Yamagata Prefecture-
  • -山形県複合農業地域における集落営農法人を事例に-

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抄録

<p>これまで,比較的法人化に消極的であった複合農業地域における集落営農においても,雇用従業員として新たに農業担い手を確保し育成に向けて取り組むとともに,これまで水田・畑作主体の一元経理経営から新たな作目導入や部門拡大といった経営多角化へ向けた取り組みが進みつつある.</p><p>背景には,近年の米価下落に伴う収益低下への対応として,より高い収益確保に向けて雇用を導入しながら経営多角化を志向することにある.経営多角化は,従来の耕種作を主とした規模拡大と省力・コスト低減に向けた経営戦略とは異なり,新たな投資や経営管理が必要とみられ,これまで「枝番方式」による個別管理としてきた組織において一気に雇用を導入して複合経営を目ざす法人運営としてはリスクや課題も少なくない.そこで,集落営農が法人化を契機に「経営多角化」に取り組む意義と課題を明らかにするために,先行して経営多角化に取り組んだ法人と法人化後も耕種作を主体として多角化に取り組まない法人を調査対象として,主に収益性と財務状況の変化の点から比較対照して実態分析を行った.</p><p>その結果,いずれの集落営農法人も前年対比の収支決算において,米価下落による売上高および交付金の大幅減額によって積立金および利益配当が不可能な状況にまで収益悪化していることが確認できた.今後とも米価等の低落が予想される中では,耕種作主体の法人経営収支は収益低下が否めない状況である.そこで,経営多角化に取り組む法人では野菜や花きによる経営複合化を志向し,そのための事業計画に沿った新たな投資を行っており,経営複合化によって収益を確保することが可能とみられた.さらに,担い手不足のもと個別複合経営において取り組んできた園芸部門の“経営継承”にも繋がる意義があるといえる.一方で,経営多角化に要する機械・施設等の設備投資が必要なことから自己資金の調達と多額の負債を抱えることとから「経営安全性」が低下することになり,適正な資金繰りと経営管理が必要となる.この点で,雇用従業員の賃金支払いや設備投資に要する経費への経済的支援(助成金)は不可欠であり,政策的な支援が求められる.大きな変革が予想される水田農業政策の下,集落営農法人は,従来の耕種作主体の低コスト化や規模拡大化を図るだけでなく,「担い手確保」への取り組みが求められておることからも,安定した周年就労へ向けた経営多角化が必須となる.</p><p>集落営農が法人化して取り組む経営多角化は,新たな作物導入(水平的多角化)において有効に機能するとみられ,それは「安定して継続し得る経営力確保」としてあり,また「地域との関係性の構築」とみることができる.生産物の加工・販売等の6次産業化への取り組み(垂直的多角化)については,調査事例では取り組む意向はなかったが分析検討が必要である.</p>

収録刊行物

  • 農村経済研究

    農村経済研究 34 (1), 79-86, 2016-07-01

    東北農業経済学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (2)*注記

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