腎移植は低心機能患者にどこまで対応できるか?

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  • 鑪野 秀一
    鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍学講座泌尿器科学分野

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抄録

<p>【はじめに】尿毒症性心不全患者は腎移植により腎機能が回復すれば、心機能も回復することが知られている。一方で心不全患者に対する腎移植は、手術適応・麻酔・周術期管理が問題となるが、患者の心不全状態により対応は様々であり、術後管理に難渋する症例もある。今回我々の経験した2症例を提示する。【症例1】60歳女性。生体腎移植を予定するも、術前EF 17%と評価された。薬物療法では心機能は改善せず、透析不足による尿毒症性心の可能性が考えられたため動脈表在化で管理したところ、術前EF 35%まで心機能が改善した。周術期経過は問題なく、術後1年目でCr 0.8mg/dlと良好である。【症例2】34歳男性。術前検査で左心不全を指摘され、薬物療法とドライウエイト調整を行うも心機能は改善せず、術前EF 14%と評価された。術中の収縮期血圧は70~80mmHg程度で、初尿は確認できなかった。術後はボリュームビューで循環・呼吸を管理することで肺水腫を回避しつつ最大限の補液を行い、ノルアドレナリン中止が可能となった。術後14日目に透析を離脱、術後1年目でCr 2.1mg/dlで外来フォロー中である。【結語】低心機能患者でも腎移植は可能であるが、低血圧を伴う場合は、麻酔導入時や周術期は極めてリスクが高い。透析条件やシャント不全により尿毒症性心に陥っている可能性もあるので、患者のコンディションを見極める必要がある。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 55 (Supplement), 303_1-303_1, 2020

    一般社団法人 日本移植学会

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