腎移植手術前の貧血管理の重要性

DOI

この論文をさがす

抄録

<p>生体腎移植は待機手術として行われる。設定された手術日にピークを合わせて様々なリスクを低減化し、考え得る最善の状態で手術に臨むことが基本である。しかし、先行的腎移植(PEKT)では移植までの期間が短いためリスク評価や必要に応じた治療が不十分となる恐れがある。特に貧血は短期間での治療が困難であり周術期に輸血を施行せざるを得ない症例も多い。実際、当科の症例を見てみると2004年7月から2015年12月までの期間でPEKT群(33例)では非PEKT群(171例)と比較して当科初診時のHbが有意に低値であった。ほぼ同時期の生体腎移植症例163例の検討では102例(62.6%)で濃厚赤血球製剤が輸血されていた。背景因子の比較では、輸血施行群で非施行群と比較して有意に女性が多く(p=0.03)、腎移植前日のHb値が低値(p<0.001)であった。幸い、免疫学的ハイリスク症例を除くと両群間でde novo DSA産生やABMRの頻度に有意差は見られなかったものの、輸血は行わないに越したことはなく、術前Hb値がより高値であれば輸血を要しなかった症例も多いと思われた。周術期の輸血回避のため、腎移植、特にPEKT施行時には術前にエリスロポエチン製剤や鉄剤などを充分に投与しHb値を上昇させておく必要がある。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 55 (Supplement), 255_2-255_2, 2020

    一般社団法人 日本移植学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ