野生ボノボにおける集団の出会いの際の親和的・性的交渉相手の選択
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- 徳山 奈帆子
- 京都大・霊長研 京都大・野生研
書誌事項
- タイトル別名
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- Grooming and sexual partner selection during inter-group associations in wild bonobos at Wamba
説明
<p>集団性動物の多くにおいて,親和的行動は他集団より自集団の個体に向けられる「内集団ひいき」が知られている。ボノボの集団間関係は比較的寛容かつ親和的で,ある程度の集団間競合関係があるものの,集団間の親和的・性的交渉も観察される。ボノボは他集団個体と積極的に親和的・性的交渉を行う「よそ者好き」なのだろうか?それとも,他集団との親和的交渉が可能であっても,傾向としては「内集団ひいき」なのだろうか?本研究では,集団の出会いの際のボノボの親和的・性的交渉相手の選択を検討した。コンゴ民主共和国・ワンバにおいて, 野生ボノボPE集団のパーティを追跡し,毛づくろい,交尾,ホカホカ(メス同士の性的社会交渉)を全生起法で記録した。パーティ内のPE集団と他集団個体の数から他集団個体との各交渉の生起頻度の期待値を算出し,観察値と比較した。メスは自集団メスよりも他集団のメスを毛づくろい相手に選択していた。ホカホカについても,他集団のメスを選択する傾向にあった。しかし,メスは自集団のオスよりも他集団のオスと毛づくろい・交尾を行う傾向は見られなかった。オスについては,他集団の個体(オス・メス)を自集団の個体よりも毛づくろい相手に選択する傾向はみられなかった一方で,交尾相手には他集団のメスをより選択していた。これらの結果から,メスには「よそ者好き」傾向があることが分かった。メスは他集団のメスとの親和的ネットワークを広げることで,協力相手や息子の繁殖相手を増やすなどの利益を得るのかもしれない。先行研究において異なる集団のオス同士は親和的交渉を避けるとされていたが、本研究では、オスにおいても「内集団ひいき」の傾向はみられなかった。 オスは他集団のメスと積極的に交尾を行ったことから、集団の出会いはオスにとって繁殖相手を増やすという利益があるのかもしれない。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 37 (0), 32-32, 2021
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390007989539298304
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- NII論文ID
- 130008091057
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可