屋久島のニホンザルにおける群間エンカウンター: 誰が前線に参加し何の交渉に関与するのか?

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タイトル別名
  • Intergroup encounters of Japanese macaques in Yakushima Island: Who participates in the front line and involves in which interactions?

抄録

<p>多くの霊長類では,群間エンカウンターで他群個体との交渉が起こるが,その敵対性や親和性は同種内,同一群内でも違いがあることが指摘されている。また,交渉への積極性も個体によって異なる一方で,個体ごとのエンカウンターへの参加率を定量的に示した研究は少ない。本研究は2018年,2019年の8月から10月の間,屋久島のニホンザル1群を終日追跡し,隣接する7群とオスグループとのエンカウンター時における群間交渉を観察した。各個体の参加率は,他群個体と10m以下の距離で最も近くにいる群内個体から後方5mの範囲を前線とし,エンカウンター中に前線にいる時間割合を用いて求めた。また,各ダイアッドの共に前線にいる割合と各個体の交渉割合を算出した。81回のエンカウンターのうち,他群と敵対的,親和的交渉が両方あったのは42回あり,どちらの交渉も時間が経過するほど生起確率が低下した。また,参加率は低順位オスとワカオスで高く,共に参加することが多いほか,低順位オスは高順位オスやオトナメスとも参加した。ワカオスはオトナに比べ,親和的交渉割合が高かった。一方,第一位オスや高順位メスの参加率は低いが,共に参加することが多く,敵対的交渉割合が高かった。以上の結果から,屋久島のニホンザルの他群との敵対的,親和的交渉は,他群を視覚的に認識した出会い頭に多く起こるが,長く続くエンカウンターでは次第に積極的な交渉が減り,非敵対的に終了している可能性が示唆された。また,一回のエンカウンターのなかに敵対的,親和的交渉が入り交じっており,敵対的な状況になると,第一位オスが親密な関係にある高順位メスを伴って参加すると考えられた。低順位オスは,普段は近接できない高順位オスやオトナメスと,他群と対峙したエンカウンターの場面で共に参加することで群内の協力性を高めている可能性があり,ワカオスは,将来移籍する可能性のある他群に親和性も見せることで関係を深めていると推察された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390007989539300480
  • NII論文ID
    130008091082
  • DOI
    10.14907/primate.37.0_39_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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