P-1-01 カニューレフリーの気管切開管理とバギング吸入が奏功した重症心身障害者の一例

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説明

はじめに 気管切開後にカニューレや体調の管理に難渋する事をしばしば経験する。今回、我々は気管切開管理において、複数の対策を講じ、症状が著明に安定した重症心身障害の一例を経験したので報告する。 症例 症例は周産期脳障害に伴う脳性麻痺、重度知的障害の28歳男性。(大島の分類1、横地分類A1)。6歳まで経口で食事摂取してきたが、誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、経管栄養を要する状態となった。17歳時、呼吸障害の進行に伴い気管切開術を受け、気管カニューレ管理が開始となった。 入所時(26歳)から筋緊張亢進症状が強く、筋緊張緩和薬を調整したが効果は不十分であった。頻回の用手換気を要する気道閉塞症状、繰り返す気道感染症状の管理に苦慮していた。気道の扁平化を認め、難治性気管肉芽があり、気管カニューレ先端が腕頭動脈に干渉していた。27歳時に予防的腕頭動脈切離術が施行され、気道閉塞症状や気管肉芽は軽減したが、筋緊張亢進症状は続き十分ではなかった。気管切開カニューレ留置がストレスの原因と考え、カニューレフリーの管理を試みたところ、筋緊張亢進症状は著明に軽減され、気道閉塞症状、気管肉芽もいずれも改善した。加湿対策として気管孔を酸素マスクに人工鼻を装着したもので覆うこと、定期吸入を施行したが、痰の粘調度増加から排痰困難となり、気道感染症を発症した。そこで、バギング吸入(ネブライザーを小児用バギング用酸素マスクと蘇生バッグの間に接続し、マスクで気管孔を覆いながら用手換気する方法)を取り入れることとした。その結果、気道分泌物の粘調度は減少し、排痰が十分行えるようになり、気道感染症の罹患もなくなった。 考察 本症例では気管カニューレの留置が強い刺激となり筋緊張が高まり、気管切開管理を困難にさせていた。カニューレフリーによる気管への負担緩和、バギング吸入による加圧・加湿対策が有効であった。 申告すべきCOIはない。

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