遺伝性血管性浮腫の急性発作抑制薬ベロトラルスタット塩酸塩(オラデオカプセル150 mg)の薬理学的特徴及び臨床試験成績

書誌事項

タイトル別名
  • Pharmacological and clinical study results of Berotralstat Hydrochloride for long-term prophylactic treatment of hereditary angioedema
  • イデンセイ ケッカンセイ フシュ ノ キュウセイ ホッサ ヨクセイヤク ベロトラルスタット エンサンエン(オラデオカプセル 150mg)ノ ヤクリガクテキ トクチョウ オヨビ リンショウ シケン セイセキ

この論文をさがす

抄録

<p>遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)は皮膚,喉頭,消化管,四肢など身体のあらゆる部位に浮腫を繰り返し呈する希少疾患であり,患者の日常生活やQOLに重大な影響を及ぼす.HAE患者の多くはC1インヒビターの欠損又は機能低下を有し,血漿カリクレイン活性が十分に制御されずブラジキニンが過剰に生成され,結果として浮腫が生じる.HAEの治療・管理は発現した浮腫に対する対症的治療と,短期及び長期の浮腫発現抑制による予防的治療よりなる.しかしながら,本邦においてはこれまで長期的なHAE急性発作の発現抑制の適応を有する薬剤はなく,アンメットニーズが高い疾患であった.ベロトラルスタット塩酸塩(販売名「オラデオカプセル150 mg」)は経口の血漿カリクレイン特異的阻害薬であり,本邦にて2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定され,2018年12月に希少疾病用医薬品の指定を受け,2021年1月に「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を効能・効果として製造販売承認された.非臨床試験で,ベロトラルスタットは血漿カリクレインを競合的に阻害し,各種セリンプロテアーゼに対して特異性を示した.高分子キニノーゲン/プレカリクレイン依存性ブラジキニン産生に対して濃度依存的な抑制作用が確認された.HAE Ⅰ型又はⅡ型患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験において,ベロトラルスタット塩酸塩150 mgの1日1回経口投与により浮腫発作発現頻度の低下が認められ,血管性浮腫に関するQOLは臨床的意義のある最小変化量を上回る変化を示した.主な副作用は消化器症状であった.これらの結果より,ベロトラルスタット塩酸塩はHAE発作の長期的な発現抑制に有効な治療薬であることが示され,HAE患者の長期的な発作管理のための本邦初の保険収載薬であり,患者にとって有用な治療選択肢になると考えられる.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 156 (6), 382-390, 2021

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (17)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ