ニコチンアミドが心筋の拡張機能障害を改善する

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抄録

心臓の収縮と弛緩のポンプ機能が何らかの原因(加齢・基礎疾患等)により障害され,十分な血液を全身に供給できなくなった状態が心不全である.これまで,心不全は収縮機能の改善を目指して治療が行われてきたが,近年,収縮機能が正常であるにも関わらず拡張機能が障害された心不全,いわゆる拡張機能不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)に注目が集まっている.HFpEFは,拡張機能の障害によって心拍出量が低下するため,収縮不全と同様の治療方法では予後の改善は認められない.心筋の弛緩(心臓の拡張)は,筋小胞体に存在するCa2+ポンプであるSERCA【Sarco(endo)plasmic reticulum Ca2+-ATPase】が収縮時に上昇した細胞内Ca2+を筋小胞体内に取り込み,細胞内Ca2+濃度を低下させることで起きる.現在,このSERCA機能の低下がHFpEFの原因の1つとして考えられており,様々なモデル動物での検討および新たな治療薬の探索が行われている.本稿では,アンチエイジング効果が期待されているニコチンアミドを摂取することで,SERCA機能の改善を介したHFpEFの予防および治療が可能であることを示した研究を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Abdellatif M. et al., Sci. Transl. Med. 13:eabd7064(2021).<br>2) Verdin E. et al., Science, 350, 1208-1213(2015).<br>3) Namekata I. et al., Int. J. Hum. Cult. Stud., 28, 701-707(2018).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 57 (11), 1050-1050, 2021

    公益社団法人 日本薬学会

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