P-1-03 難治性浮腫を契機に肺血栓塞栓症の診断に至った重症心身障害者の1例

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  • 玉田 智子
    広島県立障害者リハビリテーションセンター

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は長期臥床、下肢の麻痺、中心静脈カテーテル留置などの静脈血栓塞栓症のリスクを有しているケースが多い。しかし重症児(者)は静脈血栓塞栓症の症状である下肢痛や呼吸苦などの訴えが難しく、早期発見が困難な場合がある。 症例 33歳女性。大島分類1。生後9か月時に頭部外傷受傷し、水頭症(VPシャント留置)、痙性四肢麻痺、精神発達遅滞を呈している。慢性イレウスのため中心静脈栄養を使用しており、卵巣機能不全のため月経困難症治療剤(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール)を内服していた。嘔吐後に発熱・低酸素血症を認め、誤嚥性肺炎と診断。治療中より全身の浮腫・肺水腫を認め、利尿剤を使用しレントゲン上では肺水腫は改善したが浮腫は治療抵抗性であった。心エコーでは右心負荷所見を認めていた。誤嚥性肺炎発症から3か月後に造影CT撮影したところ右肺動脈主幹部に血栓(3.8cm*1.4cm*1.2cm)を認めた。D-dimerは 6.4μg/mlと上昇していた。月経困難治療剤中止し、経口FXa阻害薬(エドキサバントシル酸塩水和物)で治療を行なっている。 考察 肺血栓塞栓症は呼吸苦や低酸素血症、低血圧などを契機に診断されることが多い。しかし本症例では低酸素血症は認めたものの誤嚥性肺炎を発症していたため、肺血栓塞栓症の診断に苦慮した。誤嚥性肺炎が終息後も難治性浮腫が持続し診断に至った。 また、静脈血栓塞栓症の治療としては従来のワルファリン治療に代わり、直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)が広く使われるようになっている。DOAC治療は頻回の凝固系検査が必須ではなく、重症児(者)施設でも使用が容易である。 重症児(者)において静脈血栓塞栓症の評価と早期発見が課題であり、抗凝固薬の適切な使用が望まれる。 申告すべきCOIはない。

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