内視鏡下鼻副鼻腔手術 (ESS) の進歩と今後の展望

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  • 第121回日本耳鼻咽喉科学会総会臨床講演 内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)の進歩と今後の展望
  • ダイ121カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ リンショウ コウエン ナイシキョウ カ ビ フクビコウ シュジュツ(ESS)ノ シンポ ト コンゴ ノ テンボウ

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<p> 内視鏡下鼻副鼻腔手術 (ESS) の進歩と将来展望について述べる. 鼻内手術は1900年代初頭から欧州とともに本邦においても開始された. 暗い狭い視野での鼻内手術は理解されず普及は遅れた. しかし, 副鼻腔炎の軽症化ともに1980年前後から鼻内手術に内視鏡が導入され, 副鼻腔炎手術はESSがワールドワイドになった. ESS の基本コンセプトは副鼻腔の単洞化, 粘膜保存 (mucosal preservation), 鼻内気流を適正化することである. 慢性副鼻腔炎の術後不良率 (経過不良例/全症例) は ATA asthma group 16.4%, AIA ECRS group 34.7%, ECRS group 5%, non-ECRS1%であり, AIA ECRS で突出した. 難治性では生物学的製剤が有効性を示し新たな治療法となった. ESS の新たな分類が I~V 型に考案され, また, ESS の標準化の試みを目的とした日本鼻科学会認定手術指導医制度が設立された. ESS は副鼻腔炎のみならず, 腫瘍, 外傷などに適応され, 同時に光学機器が発達し, 鮮明な画像を拡大視でき, またマイクロデブリッダーやナビゲーションシステムなどの支援機器が導入され, 手術中の操作を容易にしている. ESS の最大の適応拡大の経鼻頭蓋底手術は腫瘍の進展範囲により, 下垂体腫瘍を代表とするトルコ鞍および蝶形骨平面へのアプローチ, 嗅神経芽細胞腫を代表とする嗅列や篩板に存在する病変に対してのアプローチ, 神経鞘腫や若年性血管線維腫を代表とする翼口蓋窩のアプローチが可能になっている. さらに鼻副鼻腔に隣接する眼窩腫瘍に対しても翼口蓋窩のアプローチで摘出可能になっている. 将来的に ESS にロボット手術が導入され, 特に経鼻頭蓋底手術に有用となると考えられる. またオンライン手術や AI も導入され, どこにいても質の高い医療へのアクセシビリティが確保され, 手術の質の均てん化が期待できる. さらに画像表現の進化でリアルタイムナビゲーションやプロジェクションマッピング技術による既存のカメラで撮像した画像を直接患者の臓器に投影するシステムも現実的になっている.</p>

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