序文

DOI

抄録

<p> 腎盂尿管移行部閉塞 (UPJO) の外科治療としては, 開腹手術による腎盂形成術が標準術式として広く普及している. しかし腰部斜切開によるアプローチは, 腰筋群の切開を必要とする成人例においては侵襲性が高く, より低侵襲な治療法の開発が望まれてきた. 1993年にSchuesslerら1)により報告された腹腔鏡下腎盂形成術は, 従来の開腹手術と同様のコンセプトに基づき同様の手技が実施できることから, 内視鏡手術の低侵襲性と開腹手術の高い治療効果を併せ持つ術式として期待され, 本邦においても1998年頃より臨床応用が開始され, 2004年には保険収載されるに至った. しかし, 腹腔鏡下腎盂形成術では腹腔鏡手技の中でも難度が高いとされる質の高い体腔内縫合技術が必要となることから, 本邦での実施施設は一部のhigh volume centerのみに限定され, 当初期待されたほど普及してこなかったという現状がある.</p><p> 2002年, ロボット支援腎盂形成術がGettmanら2)により報告され, 明瞭な三次元拡大視野の下で多自由度鉗子を用いて実施する手術が体腔内縫合の難度を劇的に低減することが示された. さらに2020年の診療報酬改定で本術式が保険収載されたことにより, ロボット支援腎盂形成術は手術支援ロボットを保有する施設を中心に, 熟練者の手術ではなく, むしろエントリーレベルの手術として急速に普及することが予想される.</p><p> 腎盂形成術の目的は, 水腎症に伴う諸症状の改善と腎機能の保持にあるが, 無症状で経過しつつ腎機能が持続的に低下していく症例も少なからず存在する. また, 腎盂のコンプライアンスが低下した症例では, 手術により腎盂内圧が低下して症状は改善しても水腎症のグレードやレノグラムの閉塞パターンが偽陽性となることもあり, 適応の選択や術後評価に苦慮する症例も稀ではない.</p><p> 本特集では, ロボット支援手術がスタンダードとなるであろう将来を見据え, 開腹から腹腔鏡手術, そしてロボット支援手術への一連の流れにおいて豊富なご経験を持たれる先生方に執筆をお願いし, ロボット支援腎盂形成術の術式だけでなく, 術式を問わず普遍であるべき手術適応や術後評価について改めて解説していただいた.</p><p> 本特集が, ロボット支援手術の保険収載を機に腎盂形成術を開始される多くの若手の先生方にとって有益なものとなれば幸甚である.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390008764031269504
  • NII論文ID
    130008123983
  • DOI
    10.11302/jsejje.34.237
  • ISSN
    21874700
    21861889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ