プロダクティブ・エイジング (生産的高齢化) 社会の実現に向けた難聴者への補聴器導入―補聴器を始めたシニアの変化

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  • 第121回日本耳鼻咽喉科学会総会パネルディスカッション プロダクティブ・エイジング(生産的高齢化)社会の実現に向けた難聴者への補聴器導入 : 補聴器を始めたシニアの変化
  • ダイ121カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ パネルディスカッション プロダクティブ ・ エイジング(セイサンテキ コウレイカ)シャカイ ノ ジツゲン ニ ムケタ ナンチョウシャ エ ノ ホチョウキ ドウニュウ : ホチョウキ オ ハジメタ シニア ノ ヘンカ

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抄録

<p> 高齢者を社会的弱者とみなすのではなく, 生産的・創造的な能力を活かす社会の実現が求められている.</p><p> 本稿では, 愛知医科大学, 名古屋市立大学, 岡山大学, 九州大学, 信州大学, 慶應義塾大学, 帝京大学溝口病院の7大学病院共同で行った AMED 研究課題, シニアの補聴器導入前後単一群前向き観察研究の結果を報告した. 補聴器導入から6カ月の追跡を完遂できたのは94名, 年齢76.9 ± 6.6歳で, 遂行機能の評価法である数字符号置換検査 (Digit symbol substitution test) は補聴器導入前44.7点, 6カ月後46.1点と有意な変化を示した (p=0.0106). 人との交流指標であるコンボイモデルや, 高齢者の聴覚ハンディキャップ (Hearing Handicap Inventory for the Elderly) の解析から, 聞こえにくさに理解があるはずの家族・親族との関係にすら難聴者は支障を感じており, 補聴器導入が家族・親族との関係性に良い変化をもたらした可能性が考えられた.</p><p> 後半では, 補聴器による認知機能維持の可能性について, 対象規模が大きく2021年に発表された2本の縦断研究を紹介した. 米国 National Alzheimer's Coordinating Center データベースからは, 追跡期間中の軽度認知障害 (mild cognitive impairment) 群の認知症発症が, 補聴器装用群では非装用群に比べ有意に抑制されたという解析結果が示された. Taiwan Longitudinal Study on Aging では, 認知機能障害リスクは非難聴群に比べ難聴群で有意に高いが, 補聴器の使用効果は有意ではなかったと報告された.</p><p> 長寿国日本における高齢者の社会貢献 (Productivity) 継続には聴覚補償は鍵であり, 耳鼻咽喉科医の役割は一層重要になると思われる.</p>

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