小型家電リサイクル法の市町村現場での施行状況と制度見直しの課題

  • 趙 迪
    龍谷大学大学院政策学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Law Enforcement Status of the Act on Promotion of Recycling of Small Waste Electrical and Electronic Equipment in Municipalities and Future Challenges for Institutional Reform
  • コガタ カデン リサイクルホウ ノ シチョウソン ゲンバ デ ノ シコウジョウキョウ ト セイド ミナオシ ノ カダイ

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抄録

<p>2012年8月に制定された使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(以下「小型家電リサイクル法」と略記)は,循環型社会形成推進基本法(2000年)の原則として位置付けたEPR(Extended Producer Responsibility,拡大生産者責任)は組み込まずに,使用済小型家電からの貴金属・希少金属等の回収益を活用した自発的な取組に委ねる市場原理的制度(いわゆる,「促進型の制度」)としてスタートさせた。しかし,現状では,国が設定した回収目標に対して,2018年度の実際の回収量はその7割程度に止まっているほか,逆有償で認定事業者に引き渡している市町村は,2017年度の11.0%から2018年度の14.6%に増加してきた。各主体の自発的な取組に委ねた同制度が,当初法制定時に想定していた「採算性」を持って運用できているのか,市町村の実施現場の実態や動向に注目した調査研究が必要であると考えられる。</p><p>そこで本研究は,人口が多く回収量全体に影響を及ぼすと考えられる国内政令指定都市20市の取組状況を調べ,小型家電の年間1人当たり回収量をもとに政令市20市の取組状況をグループ化し,各グループの代表例として岡山市,京都市,大阪市を選び,より詳細な調査を行った。3市の取組実態は大きく異なり,小型家電の回収量確保と高品位品の回収量確保の両立の難しさや,逆有償額が一般廃棄物処理費を上回る事案が発生していることなど,小型家電の量的および質的回収状況や回収による採算性等の側面から課題を明らかにした。最後に,市町村の実施現場で発生している課題の背景にある諸要因と小型家電に関連する事業者の属性を考慮し,現行の対象品目を①携帯電話とパソコン,②携帯電話やパソコン以外の高品位小型家電製品,③大型の家電製品,④雑小型家電製品,というカテゴリーに分け,さらに,製品に含まれる金属や有害物質の含有率表示等の情報開示を義務付け,それぞれのカテゴリーに対応する「生産者」責任を明確にしていく必要があることを示した。</p>

収録刊行物

  • 人間と環境

    人間と環境 47 (2), 2-19, 2021-06-10

    日本環境学会

参考文献 (1)*注記

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