Society 5.0と人格なき統治

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  • Governance without Personhood under Society 5.0
  • Society 5.0 ト ジンカク ナキ トウチ

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抄録

<p>我が国が今後実現すべき社会像として位置付けられているSociety5.0について、その中核をなすサイバー空間とフィジカル空間(物理空間)の融合という概念を中心に検討する。まず、現在までに存在すると想定されている工業社会(Society 3.0)・情報社会(Society 4.0)それぞれの性質について、物理空間におけるモノの生産・流通の効率化とモノへの化体を経ない純粋な情報財流通の実現と要約できることを指摘する。その上で、現在の社会ではモノと情報の空間が分断されていること、両者が緊密に結び付くことを阻害している人間という結節点に注目し、IoT・AI・ロボティクスといったICT技術を活用することによりその問題を解消して、自己決定的な行為主体でなく観測の客体としての人間が重要な位置を占める「人格なき統治」を実現するところにその中心的な意義があると指摘する。また、そのような形で社会のスマート化を進めることが資源利用の効率化を通じたSDGsの実現に貢献すること、ICT利活用により主体としての人の動作や接触に依存せず社会機能が維持できるwith/afterコロナ時代のレジリエントな社会構築につながり得ることを主張する。その一方、嘘・手加減・不服従といった一見ネガティブに捉えられる要素が、法を通じて行為主体たる人間の行動をコーディネートすることを意図してきた従来の統治においては一定の正当性を担い、人間的な価値の実現に貢献するものと位置付けられてきたことを踏まえ、「人格なき統治」が社会内部における規律訓練や法規範の自動的な実現・執行までを対象とする場合にはそのような要素を利活用する可能性が消滅すること、だからこそSociety 5.0において人間的価値・人間中心主義が強調されざるを得ないという論理的関係にあることを指摘する。</p>

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