日本・米国・英国 における小児用医薬品の開発推進策と承認状況調査

  • 諏訪 美月
    慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座
  • 三宅 真二
    慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座 慶應義塾大学病院臨床研究推進センター
  • 漆原 尚巳
    慶應義塾大学薬学部医薬品開発規制科学講座

この論文をさがす

説明

<p>【目的】「小児の適応外使用問題に対し、米国が先駆的に是正を促進している」という仮説のもと、日本と英国における小児適応の取得状況を調査する。また、その背景となる日米欧3極の開発推進策を分析する。 【方法】2016年1月1日から2020年4月30日の間にFDAのNew Pediatric Labeling Information Databaseに掲載された小児ラベリング情報をデータソースとし、米国で小児適応が承認された製品のうち、日本と英国の両方で成人に対し承認されている72製品を対象とした。添付文書等を判断材料とし、日本と英国における小児適応の取得割合を算出した。小児への開発着手状況について、日本は臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT)、英国は小児開発計画(PIP)を用いて調査した。更に、日本の製品について、厚生労働省の公開資料を用いて、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で検討された小児に関する開発要望の有無と希少疾病用医薬品指定の有無を調査した。【結果・考察】英国では、対象薬72製品のうち83%(60/72)が小児適応を有していた。小児適応のない12製品のうち、小児への臨床試験が実施中あるいは実施予定の医薬品は4製品あった。欧州では、米国と同様に小児用医薬品の開発推進策が法制化されており、企業への開発要請権とインセンティブの付与が小児の効能追加に寄与していると考えられる。日本では、対象薬72製品のうち小児適応を有していたものは44%(32/72)にとどまった。72製品中11製品は、小児に関する開発要望が提出されており、全て小児適応を有していた。厚生労働省が製造販売業者へ開発要請または開発企業を募集することで、小児を対象とする開発および承認申請の実施に繋がりやすいことが推測される。希少疾病用医薬品指定がある医薬品は19製品含まれており、そのうち小児適応を有していたのは約半数(9製品)であった。希少疾病用医薬品に適用される各種インセンティブは、小児用医薬品開発に必ずしも寄与しているとは限らない。【結論】 米国と同様に小児用医薬品の開発推進策を法制化している欧州の諸制度により、英国では小児適応の承認が進んでいる一方で、日本は大きく遅れを取っていることが明らかになった。日本における小児適応外使用問題の一層の是正に向け、欧米の事例を参考にしつつ、2020年4月の医薬品医療機器等法の一部改正で新設された「特定用途医薬品指定制度」の活用が期待される。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ