民権政党停滞期における「無形結合」路線の論理と展開

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書誌事項

タイトル別名
  • The logic and development of the trend towards “nonmaterial” political affiliation in the midst of stagnation in the civil rights party movement in Meiji Japan
  • The origins of “wider regional associations”
  • 〈広域地方結合〉の成立を中心に

抄録

本稿は、西日本の政党の動向と、懇親会という運動形態に注目することで、民権運動の停滞期(明治一六~一八年)に特有の運動の論理と展開について解明しようとするものである。<br> 明治一七年の関西懇親会は、自由党と立憲政党の主導のもと準備・開催された。同懇親会は、大同団結が強調され、関西を中心に多数の地域から参加者を得たほか、四大政党の関係者が一堂に会するなど盛況を極めた。党派と地域を問わず、広く同主義の人々を糾合し、持続的に懇親を重ねることで、緩やかな連帯の成立を目指した点に同懇親会の特質があった。こうした特質をもつ懇親会は、集会条例改正後の「隔地割拠」(中央―地方関係の疎遠化)と、偽党撲滅運動後の党派対立の激化という、当該期の政党運動が抱えていた課題を克服する可能性を有するものであった。<br> 以上のような特質を帯びた懇親会は、人々が集まって親交を深めるような単なる懇親会ではなく、規約・主義に基づいた、組織性のある一種の政治団体的性格を持つものであった。関西懇親会を主導した立憲政党は、この政治団体的な性格を有する懇親会を、党名簿や党規則を伴う有形政党ではない、同主義者の結合である「無形結合」として捉えていた。この時期、立憲政党や、同党と気脈を通じる有志は、東北・関西・九州といった一定の地域を単位とする懇親会形態の「無形結合」(=〈広域地方結合〉)を日本各地に創出しつつ、最終的にそれらを結びつけて〈全国的大同団結〉を図ろうとする長期的な構想を有していた。関西懇親会もそうした長期的な「無形結合」路線の一環として位置づけられていたのである。<br> 以上のように、民権政党の停滞期には、懇親会が政党運動の重要な形態として浮上した。こうした漸進的に懇親を重ねるという運動形態は、この時期に発生した激化事件とは異なる論理を有し、社会から一定の支持を集めていた。当該期は政党運動が停滞したと評価されてきたが、こうした大同団結運動につながる可能性をもつ、この時期固有の運動が展開していたのである。

収録刊行物

  • 史学雑誌

    史学雑誌 129 (12), 1-38, 2020

    公益財団法人 史学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390008998107451520
  • NII論文ID
    130008131359
  • DOI
    10.24471/shigaku.129.12_1
  • ISSN
    24242616
    00182478
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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