上昇気流の発達状況に着目した気流シーディングによる豪雨抑制効果に関する研究

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タイトル別名
  • Study on heavy rainfall suppression effect by airflow seeding focusing on the development of updraft

抄録

<p>地球温暖化の進行により,降水量増加に伴う洪水リスクが高まっている.令和2年7月豪雨では,多くの地域に甚大な被害をもたらした.今後も甚大な被害をもたらす豪雨災害の発生が予想されることから,より一層な対応が求められる.そこで,本研究では本来,干ばつなどの対策に使われる人口降雨技術である「クラウド・シーディング」(以下シーディングとする)を降水抑制として利用することを検討した.シーディングに関する先行研究から降水抑制効果が確認され,特に上昇気流に着目した気流シーディングでは小規模の対象領域のシーディングで降水効果を得られたことが示された.しかし,上昇気流の発達を捉える方法などに検討の余地があった.そこで本研究では,上昇気流が強まる時間と卓越する高度に着目した新たなシーディングの手法を考案した.メソ気象モデルWRFによる数値シミュレーションを行い,シーディングによる降水抑制効果の評価と降水抑制効果が得られたケースのメカニズムの解析を行った.</p><p>本研究で使用したメソ気象モデルWRFではネスティング計算を行い,解析にはDomain4を対象とした.また,シーディングをWRFの計算スキーム内で算出される氷晶核の数濃度の値に操作倍率をかけることで間接的にシーディングを表現した.</p><p>考案した手法はAdvanced-SeedingとPinPoint-Seedingである.2つの手法とも上昇気流の発達時間と高度に着目し,シーディング実施時間を設定,Advanced-Seedingでは面的シーディング,PinPoint-Seedingではポイントでシーディングを実施した.</p><p>シミュレーションの結果,Advanced-Seedingでは,実施領域が狭いケースでも高い効果を得ることが確認された.PinPoint-Seedingでは,上昇気流が発達し,かつ降水のピーク前の時間にシミュレーションを実施することで,高い降水抑制効果が示された.降水抑制のメカニズムとして,シーディングにより霰がほかの降水粒子に変化することで,上昇気流の強化により降水のピーク前に積雲が発達し,降水ピークよりも早い段階で下降気流が発生することでピーク前に降水が抑制されたのではないかと考えられる.</p><p>今後の課題としては,シミュレーションを多く実施し,降水抑制が高く促進リスクが低い条件を明確化することが挙げられる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390009084486317056
  • NII論文ID
    130008137998
  • DOI
    10.11520/jshwr.34.0_232
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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