紙が演出した文明史上の交代劇

書誌事項

タイトル別名
  • Revolutions in the History of Civilization Induced by Paper
  • 紙が演出した文明史上の交代劇(第9部)印刷との出会い
  • カミ ガ エンシュツ シタ ブンメイ シジョウ ノ コウタイゲキ(ダイ9ブ)インサツ ト ノ デアイ
  • Part 9:Paper and Printing
  • 第9部 印刷との出会い

この論文をさがす

抄録

<p>紙と書写が社会に広がり,複写が増えてくると,それを合理化しようと印刷が工夫される。</p><p>日本では,8世紀に,百万個の小塔(高さ20 ㎝)に入れる100万枚の陀羅尼経(幅5.4 ㎝)を印刷で造った(年代の判明する世界最古の印刷物)。しかし,書物は書写が主体であった。そのなかで,寺院が,需要に答えて,お経を木版印刷で出版していた。江戸時代初期に金属活字による印刷が試みられるが定着せず,結局,木版印刷が江戸時代の文化を支えた。</p><p>朝鮮では,10〜13世紀に木版印刷による経典の印刷が盛んに行われた。さらに,14世紀には金属活字による経典の印刷も行われた。15世紀には,活字印刷に適するハングルが開発された。しかし,ハングルの使用禁止策等により,金属活字印刷は,一部の特権階級に限られ,普及しなかった。</p><p>中国では,7世紀頃から木版印刷が普及し,13世紀にはその黄金期を迎えた。15世紀には,広範囲の書物が木版で印刷された。より多くの複写需要に答えるため,活字印刷も工夫された。11世紀には粘土活字,14世紀には木活字,15世紀には銅活字が使用された。しかし,膨大な数の漢字活字を取り扱う煩雑さがその発展を難しくした。</p><p>イスラムは,8世紀に紙を手にし,書写と木版印刷で幾何級数的に出版を増やしていった。15世紀に,金属活字を手にしたイタリアが,アラビヤ語書籍の印刷を始め,アラブ世界に輸出しだす。一方,アラブは印刷を禁止(コーランのcopyistの反対等による),それまで比肩してきた世界の文明から後れを取ることになった。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 75 (10), 935-941, 2021

    紙パルプ技術協会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ