肺循環の成り立ちと肺静脈形成の形態学的考察

  • 阿部 志津香
    岩手医科大学医学部, 解剖学講座人体発生学分野
  • 村嶋 亜紀
    岩手医科大学医学部, 解剖学講座人体発生学分野
  • 人見 次郎
    岩手医科大学医学部, 解剖学講座人体発生学分野

書誌事項

タイトル別名
  • ハイ ジュンカン ノ ナリタチ ト ハイ ジョウミャク ケイセイ ノ ケイタイガクテキ コウサツ

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説明

肺循環は,動物の陸棲による肺呼吸の成熟に伴い確立された循環経路である.進化過程での体循環系から肺循環系の確立には心臓と肺との協調的な発達が必要である.肺血管の個体発生は古くより議論されているが,肺静脈形成に関わる正確な過程,その分子制御については不明な点も多い.肺静脈還流異常症は,正常では左房へ還流する血液が,肺静脈の形成異常により体循環の静脈系に還流する.この異常症の肺静脈の特徴は,肺血流の還流路が初めに体循環の一部として形成された後,左房への還流路を確立するという系統発生学的な知見と相反しない. ここでは肺とその血管系の発生についてこれらの論点を要約する.さらに最近の遺伝学的研究に基づき,肺静脈形成過程の分子機構についても概説する.この総説は,肺循環の確立に関して,系統進化学的,個体発生学的な考察を深め,肺静脈還流異常症などの先天性心疾患の理解のために必須であろう視点を提示する.

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