クリントン政権の為替政策を位置づける : トーク・ダウンの終焉?

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タイトル別名
  • An Analysis of the Exchange Rate Policy of the Clinton Administration : The Demise of "Talk-Down"?
  • クリントン セイケン ノ カワセ セイサク オ イチヅケル トーク ダウン ノ シュウエン

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抄録

type:原著

type:Article

を引き起こすなど悪影響をもたらした。「トーク・ダウン」は特に日本に対して有効であった。それは,対米輸出依存が高い一方,国内産業保護のために円高メリットが顕在化しにくい等の体質を日本経済がもっていたからである。さらにその背景には日本経済が長期的な円高トレンドに曝されていたという事実がある。日本経済の長期的な円高トレンドは主に国際経済学上Balassa-Samuelson効果といわれる要因が働いたためである。Balassa-Samelson効果とは,貿易部門の生産性上昇率が非貿易部門の生産性上昇率を上回ると物価が上昇するが,自国の部門間生産性上昇率格差が貿易相手国の部門間生産性上昇率格差を上回ると,実質為替レートが増価する現象をいう。Balassa-Samuelson効果は途上国が先進国にキャッチアップする過程で最も典型的に現れる。しかしクリントン政権は90年代後半には「トーク・ダウン」政策を放棄し,「強いドル」政策に転換した。これは一時的な転換ではなく,米国の対日トーク・ダウン政策は終焉したと考えられる。それは90年代に入ると日本のキャッチアップの完了等からBalassa-SamueIson効果が消滅したからである。本稿はBalassa-Samuelson効果を消費者物価・卸売物価上昇率格差の日米比較で実証し,特にそれが90年代に入って消滅したことを主張するものである。戦後長期に亘って続いた円高圧力は少なくとも実質面からは消滅したと考えられる。

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identifier:KJ00004186246

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