土偶の考古学的検討と先史バローチスターン社会の展開 ─ 愛知県陶磁美術館保管のパキスタン先史土偶から ─

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  • Report on the Survey of the Archaeological Materials of Prehistoric Pakistan stored in the Aichi Prefectural Ceramic Museum Part 6: Human Figurines and Some Remarks on the Social Development in the Prehistoric Balochistan

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抄録

本稿は、愛知県陶磁美術館に保管されている土偶に関する調査報告である。前稿[Konasukawa etal . 2011, 2012; Shudai et al . 2009, 2010, 2013]までに報告した彩文土器と共に陶磁美術館が保管している土偶は、人形が23点、動物形が10点で、いずれも現在のパキスタン・イスラーム共和国の南西部にあたるバーロチスータン丘陵部に展開した先史文化の所産であると考えられる。土偶は、紀元前3千年紀初頭から前3千年紀中頃までのバローチスターン丘陵部に展開した先史社会における地域間交流と社会展開の考察に多大な考古学的情報を提供するものである。こうした理由から、盗掘または骨董市場にて入手された資料であっても、筆者らは愛知県陶磁美術館が保管しているこれらの土偶群をいち早く共有・活用できるデータとするために、その資料化を進めてきた。 ここに紹介する土偶は、クッリ式、ジョーブ式を中心としたバローチスターンの先史文化の土偶型式に属し、先史土偶に多くみられる女性土偶の他にジョーブ式の男性土偶の表徴を備えた女性土偶も含まれる。後者の土偶には後のインダス文明に現れる石製の「神官王」像や男性土偶との間に共通する表徴を見いだせる。この男性土偶の表徴を備えた女性土偶は、南アジアの先史社会がどのようにして文明社会へと展開したのかを考察するに多いに資するものである。 報告者は、女性土偶を含めた先史社会の土偶の変遷を概観した後に、女性土偶から男性土偶出現にいたる型式変化から、男性土偶に読み取れる社会的意味を考察し、バローチスターン丘陵の先史文化とインダス文明がその社会統一概念において対立していたとの見解を述べる。

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