<論文> 彫刻家・淀井敏夫の造形 : アルベルト・ジャコメッティとの比較による一考察

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  • <Research Paper> Molding Works of Sculptor Toshio Yodoi : A Study Based on Comparisons with Alberto Giacometti

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本研究は、戦後日本の彫刻史において代表的な具象彫刻家として位置付けられる淀井敏夫(1911~2005)の造形的特質について論考を深めるものである。石膏直付け・細い形体・地肌の変化の考察を通し、淀井の造形の変遷を明らかにした。1970年初頭から淀井は度々アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti 1901~1966 フランス)の作品と比較されるようになる。これは、1970年初頭にジャコメッティの作品が日本に紹介され始めたことが要因であると考えられた。類似している点としてあげられているのは、形体の細さや荒れた地肌である。しかし、これは外的要因に限ったものであり、両者の制作主題を鑑みると類似とは言えないと考える。本論文では、両者の制作対象としての人物の捉え方、制作方法と像高、細い形体を用いた理由、彫刻作品における空間性の違いの観点から、両者の彫刻作品の造形の違いを明らかにした。考察から、淀井が有機的な生命体としての美しさを持つ人間像を表現する一方で、ジャコメッティは親しい人の死を目撃した衝撃から、人間の本質を浮き彫りにするという主題を持ち制作していたというコンセプトの違いを結論付けた。両者の作品の主題や制作意図には大きな違いがあることからも、二人の造形は異なるものであるということが明らかになった。

著作権保護のため、すべての掲載図版に墨消し処理を施しています。

収録刊行物

  • 芸術学研究

    芸術学研究 23 61-70, 2018-12

    筑波大学大学院人間総合科学研究科

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