写真照合法を用いた夢イメージの視覚特性に関する検討

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  • シャシン ショウゴウホウ オ モチイタ ユメ イメージ ノ シカク トクセイ ニ カンスル ケントウ

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抄録

夢はいったいどのように「見えて」いるのだろうか。ソフトフォーカスのかかったうすぼんやりとした視覚世界なのか。セピア色に色褪せて見える無彩色の世界なのか。あるいは、現実の視覚世界と変わらない明瞭さをもつ色彩に満ちあふれた総天然色の世界なのだろうか。その際、色彩の強さは、明るさは、コントラストはいったいどうなっているのだろうか。しばしば映画の中で表現される夢の情景のように、特殊な視覚効果を用いた独特の画像世界なのだろうか。  このような夢の見えの視覚特性については、従来色彩に関する研究が比較的多く報告されてきた。たとえば実験室でのREM期覚醒法による研究では、報告される夢のおよそ8割に色彩が認められることが確認されている(Kahn, Fisher, and Cartwright, 1962;Kerr, 1993)。夢の知覚様式などの形式面(c.g.Hobson, 1988)に関する最近の質問紙調査では、色彩を伴う夢の頻度は若い世代ほど多く、大学生ではおよそ8割の者が色彩夢をけいけんすることを示すデータが得られている(松岡・岡田・畠山,1993)。夢の色の物理特性に関する研究も行なわれており、Padgham(1975)は色彩照合された夢の色を色度座標上に配置して分析し、夢で見る色は比較的彩度の低いものが多いこと、赤や黄が多くて青色系がほとんどないことなどを指摘している。色以外では夢の中の形態弁別と奥行き視に関する研究(Herman, Roffwarg and Tauber, 1968)があり、そこでは夢のおよそ8割に奥行き視があると報告されている。これらの研究は、夢の色彩の有無やその特徴、視覚特性の一部の特徴について検討したものではあるが、夢イメージの見えの全体的な視覚特性を対象としたものではない。

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