体細胞ミトコンドリアDNAの維持機構 : 疾患と老化

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  • 康 東天
    九州大学大学院医学研究院臨床検査医学

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タイトル別名
  • Maintenance of Mitochondrial DNA in Somatic Cell : Diseases and Aging
  • タイサイボウ ミトコンドリア DNA ノ イジ キコウ シッカン ト ロウカ

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抄録

ヒトのミトコンドリアゲノムは13の電子伝達系サブユニットと22のtRNAと2つのrRNAをコードしており, 細胞あたり数十から数千コピー存在している. コードしている遺伝子の数は限られているが, 全ての遺伝子はミトコンドリアにおける酸化的リン酸化による好気的ATP合成に必須である. ミトコンドリアは細胞におけるATP合成の80%以上を占めていることから, ミトコンドリアゲノム異常は細胞の生存と機能に重大な支障を来す. 培養細胞系ではミトコンドリアDNAを失ったいわゆるrho0細胞も特殊な環境下で生存可能であるが, 個体としては, ミトコンドリアDNAの維持は種々の機能を正常に保ち生存していくために必須である. 実際これまで, ミトコンドリアゲノムの変異に起因する先天的なミトコンドリア脳筋症が数多く報告されており, 新たな変異の報告は現在もさらに増えつづけている. ミトコンドリアゲノムは細胞あたり複数コピーで存在し, そのコピー数は細胞のエネルギー需要とおおよそ平行している. つまり細胞が要求するレベルのミトコンドリア機能を保持するのには, 一定のコピー数のミトコンドリアゲノムが維持されることが必要である. このため, ミトコンドリアゲノムの維持という場合, 遺伝情報そのものの維持に加え, 遺伝情報量の維持も考える必要がある. 最近は, 心不全, がん, 糖尿病などのより一般的な疾患においてミトコンドリアゲノム異常関与が解明され, 先天性のミトコンドリアゲノム異常に加え, 加齢に伴う体細胞性のミトコンドリアゲノムの変異とその維持の重要性が認められつつある.

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