21世紀の「国立大学法人」の課題

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  • 黒川 清
    東海大学総合科学技術研究所教授 | 日本学術会議会長 | 東京大学先端科学技術研究センター教授

書誌事項

タイトル別名
  • Challenges of 'National' University System in Japan
  • 21セイキ ノ コクリツ ダイガク ホウジン ノ カダイ

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抄録

日本近代化の高等教育政策から100年余りの歴史的変遷を経て,国立大学は「独立法人」となった.所詮,「国立」ということと「学問の自由と大学の自治」とは基本的に相容れないことは自明であり,明治時代にも国立大学を「独立した法人」にすべきという動きは幾度かあった1).しかし,当時の日本国のあり方,政府の権力と大学との力関係ではその目的は果たせなかった.開発途上国ではその限られた国の財政資源を「国立大学」に投資して,人材の育成を図るのは当然で,明治時代の日本はまさにそのような時代であった.このような時代にあって,「学問の自由と大学の自治」を唱えて「国立大学はその任に適さず」として慶応義塾をつくった福沢諭吉の見識と実行力は卓越したものがあったといえよう.20世紀後半の日本は日米安保条約と冷戦構造のもとに,大学も多くの企業と同じく,「護送船団式」の,文部省主導で保護され「成長」してきた.経済大国となった日本で,「主要な大学」が国立であることに疑問さえもたず,学問の自由と大学の自治を唱え,「独立法人化」に際しても,「国家公務員の身分」保障を要求し,自分たちで定年さえ延長する教官(「官」なのである)とはどういう人たちなのか.この辺の背景を探りつつ,「国立大学法人」について考えてみたい.

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