重粒子線がん治療の現状と今後の展開

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  • 塩山 善之
    九州大学大学院医学研究院重粒子線がん治療学講座
  • 篠藤 誠
    放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
  • 松延 亮
    国立病院機構福岡東医療センター放射線科
  • 松本 圭司
    放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
  • 吉武 忠正
    九州大学大学院医学研究院重粒子線がん治療学講座
  • 鎌田 正
    放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
  • 辻井 博彦
    放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
  • 本田 浩
    九州大学大学院医学研究院臨床放射線科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Heavy Ion Radiotherapy for Malignant Tumors : Current Status and Future Direction
  • ジュウ リュウシセン ガン チリョウ ノ ゲンジョウ ト コンゴ ノ テンカイ

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抄録

放射線治療は,外科治療および化学療法とならんで「がん治療」の3本柱の1つである.これまではガンマ線やX線が主に用いられてきたが,体表近くでエネルギーが最大となり徐々に減衰はするものの体内を透過してしまう性質を持つため,線量の集中性が低いことが問題であった.そのため,近年,病巣へ多方向から集中して照射する3次元原体照射法(3D-CRT)や,更に放射線強度を部分的に変化させて線量分布を最適化する強度変調放射線治療(IMRT)など相対的に線量を集中させる照射技術が開発され,治療効果の向上および副作用の低減に寄与している.一方で,加速器技術の進歩とともに,シンクロトロンやサイクロトロンといった粒子加速器により光の速度の60-80%という超高速に加速された荷電粒子をがん病巣にピンポイントで照射する粒子線治療の研究および臨床応用が進み,その高い有用性が注目されている.粒子線治療は陽子を用いる「陽子線治療」とそれよりも重い荷電粒子を用いる「重粒子線治療」とに大別される.現在,重粒子線として実際に臨床応用されているのは炭素イオン線のみであることから,重粒子線治療と言えば,現時点では「炭素イオン線治療」を指すことになる.陽子線,重粒子線に共通する点は,従来のX線やガンマ線と比較して線量集中性が高いという物理学的特性である.一方,両者の大きな違いは生物学的特性であり,重粒子線はX線・ガンマ線,陽子線に比較して明らかに高い生物効果を持つという点である.本項では,従来のX線・ガンマ線治療やもう1つの粒子線である陽子線治療と比較しながら,重粒子線治療の特徴,実際の治療法,治療成績,国内外の現状や今後の展開などを紹介する.

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